Medical

医療へのアクセス向上

世界には、医療環境や医療制度、公衆衛生や教育、所得格差などのさまざまな社会的要因により十分な医療を受けられない国・地域が存在します。栄研グループにとって、そのような国・地域での「医療へのアクセス向上」は重要な責務のひとつです。EIKEN WAYにおいて「だれでも、どこでも、いつでも安心して検査を受けられる製品・サービスの提供」をステークホルダーへの責任として掲げ、世界の人々の生命・健康を守るために、その改善に向けた取り組みを進め、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に貢献しています。

医療水準の向上支援

遺伝子検査製品を通じた世界的感染症への取り組み~結核・マラリア・NTDs ~/LAMP製品

世界三大感染症である結核とマラリアはいずれも、早期診断によって治癒が見込める疾患です。しかしながら、多くの途上国では医療へのアクセスが不十分なため必要な検査が行われておらず、その結果それらの感染症が今でも蔓延し多くの方が命を落としています。また、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases : NTDs)と呼ばれる疾患群においては、その市場性の低さから有効な治療法が確立されておらず、アクセスすべき医療さえ構築されていない場合も多いことが知られています。SDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までにこれらの感染症の撲滅に貢献することを目標にしています。そのような課題解決として開発された、当社の独自技術LAMP法を用いた感染症の検査システムは、医療へのアクセスを向上させることでそれら感染症により発展途上国が被っている社会的損失の回避およびそれに続く経済的な発展に貢献しています。また、各国政府·保健当局、大学、政府機関等とも協力し、検査システムの定着と普及に取り組んでいます。

TB-LAMP(結核検査システム)

世界では毎年約1,000万人が結核に罹患し、約150万人が命を落としています。栄研化学では、独自技術LAMP法を用いた結核検査システム(TB-LAMP)を開発し、2016年にWHO(世界保健機構)のガイドラインに収載され、スメア検査(喀痰塗抹検査)に代わり得る検査として推奨されています。TB-LAMPは、結核菌群(MTBC)を検出するための遺伝子検査で、喀痰検体から専用のDNA抽出キット(PURE DNA抽出キット)を用いてDNAを抽出し、最小限の機器を使用し増幅、蛍光目視により、短時間(約1.5時間)で判定ができます。ソーラーパネルやバッテリーを装備することが可能で、電力インフラ未整備の発展途上国や医療過疎地での普及が期待されています。また、各国政府·保健当局等と協力し、本システムの実証試験を経て結核対策ポリシーガイダンスへの収載とスクリーニングプログラムの定着に継続的に取り組んでいます。

TB-LAMP活用の様子(カメルーン)

ザンビア共和国におけるTB-LAMPの取り組み紹介
掲載:国立国際医療センター協力局「TENKAI Project News Vol.2」(P11-13)

Malaria-LAMP(マラリア検査システム)

マラリアは、熱帯地域を中心に多くの人々が脅威にさらされグローバルヘルスの課題となっています。2020年には2億4,100万人が感染し、推計62万7,000人が死亡しています。そのうちの7割が5歳未満の子どもです。更にCOVID-19のパンデミックにより、最悪のシナリオとして、マラリア対策の進展が20年前の状況に後戻りしかねない状況も示唆されています。
栄研化学は、既にLAMP法を用いた3種類のマラリア属原虫検出試薬(マラリア属原虫、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫)を世界で供給可能としています。Malaria-LAMPは、マラリア属原虫を、短時間(約1.5時間)で高感度に検出でき、現在汎用されている顕微鏡法やイムノクロマト法では見逃されていたマラリア患者を、本製品の特長である感度の高さを活かすことで精度よく見つけ出すことが可能です。更に、Malaria-LAMPは極めて高感度なため、無症状であるが極少数のマラリア原虫に感染している人を見つけ出すことが可能です。Malaria-LAMPを用いたサーベイランス活動によってそのような感染者を見つけ出すことは、特定の地域からマラリアを排除する上で有効であると考えられています。栄研化学は、これら試薬をより多くのマラリア浸淫国に普及させることで、世界のマラリア対策に貢献していきたいと考えています。

Malaria-LAMPを用いたマラリアサーベイランス研究ビデオ(ハイチ)

顧みられない熱帯病への取り組み(NTDs)

顧みられない熱帯病は、主に熱帯·亜熱帯地域の発展途上国の貧困層を中心にまん延している寄生虫、細菌、ウイルス、真菌等による疾患のことで、その市場性の乏しさより創薬等の研究開発が積極的には行われない疾患群を指します。世界保健機関(WHO)がNTDsと定義する20種類の疾患群だけでも世界で10億人以上が感染していると言われており、深刻な社会問題になっています。
LAMP法はその簡易性や迅速性からNTDs用の病原体検出への応用が期待されており、これまでほとんどのNTDs病原体検出へのLAMP法の応用が学術論文等で報告されています。当社でもTB-LAMPやMalaria-LAMPで培った技術を応用し、幾つかのNTDs検出用LAMP試薬を開発しています。 例えば、国連がSDGs 3 に関連して実施しているアフリカ睡眠病(Human African Trypanosomiasis : HAT)の排除活動において、その病原体であるTrypanosoma brucei 原虫を高感度で検出するLAMP試薬が活用されています。今後はリーシュマニア症やシャーガス病といったHAT以外のNTDsへの応用も進め、NTDsの被害を受けている全ての人々に迅速で正確な診断とそれに基づくより有効な治療へのアクセスを提供していきます。

参考:Driving elimination of human African trypanosomiasis (HAT) in a challenging transboundary region in line with SDG 3 and SDG target 3.3 - United Nations Partnerships for SDGs platform.

HAT対策活動の様子(DRコンゴ)
Origin: Joseph Ndung'u (FIND)