医療従事者向け製品情報

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奈良県生駒郡三郷町

 事業概要   

奈良県生駒郡三郷町長寿介護課 地域包括支援センターでは、令和6年4月より一体的実施教室をスタートした。これは国が施策する「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」を三郷町独自のプログラムとして具体化したもので、高齢者の健康啓発と介護予防を一体的に目指す。今回、令和6年10月まで実施していた体組成計を用いたインボディー測定や食事、運動習慣のオリエンテーション・歯科衛生士など専門職からの指導に加え、嗅覚をチェックする「ニンテスト」を新たに追加した。これにより、介護予防事業の充実と高齢者向けの既存事業にも新たな展開が見えてきた。

 事業内容   

・事業名:一体的実施教室

・対象年齢:三郷町にお住いの65 歳以上の住民

・対象者:いきいき百歳体操参加者・生き生きクラブ登録者

・開始時期:令和6年4月より

・事業の場所:各地区18か所の公民館や集会所

 一体的実施教室の流れ 

1. チェックリスト

2.体組成・身長などの測定 

3.ニンテスト(嗅覚チェック)

4.フレイル予防や運動習慣のオリエンテーション・保健師、管理栄養士など専門職からの指導

 

 

1 . チェックリスト

 このチェックリストは、口腔機能、認知機能、運動能力などを総合的に評価するためのものです。これを活用することで、健康に関する幅広いリスクをより正確に把握することが可能になります。今後、チェックリストで気になる点が見つかった場合には、それぞれの分野に応じた個別の保健指導や、高齢者が生活習慣を改善できるよう支援する取り組みを計画しています。

 

2. 体組成・身長などの測定 (体組成計)

 この測定では、持ち運び可能な体組成計を使用して体内の水分・タンパク質・ミネラル・脂肪などの体組成を分析し、筋肉量や脂肪量をグラフで可視化することで、自分の体の状態をひと目で把握できます。BMI(体格指数)や体脂肪率を用いた肥満度の評価に加え、筋肉量は部位別に測定されるため、運動の目安としても活用可能です。測定結果に基づき、健康管理士による数値の説明や、管理栄養士による食事のアドバイスなど、個別の健康指導が行われています。

3. ニンテスト(嗅覚チェック)

 ニンテストを用いた「嗅覚チェック」を実施しています。嗅覚は認知機能と密接に関係しているとされており、認知機能が低下して物忘れなどの典型的な症状が現れる前に、ニオイを識別する能力が低下するといわれています。ニンテストは、チェック時の嗅覚をスコア化できるため、経時的な変化を把握することが可能です。今後は、チェックを受けられた方々の状況を継続的に確認し、それに応じた指導やケアを行ってまいります。

4. フレイル予防や運動習慣のオリエンテーション・保健師、管理栄養士など専門職からの指導

 参加者にフレイル(加齢に伴う心身の活力低下)への理解を深めてもらうため、説明を行っています。フレイルは健康と要介護の中間に位置し、早期の予防や支援により健康な状態に戻る可能性があるため、早期対応が重要です。予防には、運動習慣の促進、栄養改善、口腔ケア、社会参加などが必要です。特に口腔機能の低下は、栄養不足につながるため、歯科衛生士による座学を通じて、口腔・嚥下機能の重要性を学んでいただいています。また、筋力やバランス能力の維持が転倒・寝たきり予防につながることを作業療法士から説明し、日常生活で実践できる運動の工夫を紹介しています。これらの取り組みを通じて、住民の皆さまがフレイルを正しく理解し、健康寿命の延伸と生活の質の向上を目指しています。

 インタビュー 

★ 一体的実施教室を通して高齢者の健康管理・介護予防を図っていきたい ★

三郷町 住民福祉部 長寿介護課 地域包括支援センター​​


●中川 晋介 さん   (左)

●細田 和加子 さん  (中央)

●高塚 美和 さん      (右) 

 三郷町はどんな町ですか?   

三郷町は、奈良県の西部に位置する大阪府への玄関口です。信貴山(しぎさん)の東南に位置、日本遺産の龍田古道でも広く知られ、全住民が生涯活躍できる住み続けたくなる魅力のあるすこやかなまち、「すこやか未来都市さんごう」をめざして町政に取り組んでいます。

 ニンテストをお知りになった経緯やその背景をお聞かせください。   

令和5年9月に参加した日本認知症予防学会で嗅覚が認知機能との関係が深いこと、また嗅覚を確認するための製品(ニンテスト)があることを知りました。認知機能の低下に伴い嗅覚も低下する場合があることから、介護予防の施策として具体的な活用方法を役場内で協議、導入に至りました。

 事業でのニンテストの活用方法を教えてください。

三郷町では高齢化が進行しており、現在65歳以上の高齢者は住民全体の約31%となっていて、今後認知機能の低下などの理由から介護認定となる方も増えることが予想されました。三郷町では平成23年から認知症予防事業としてパソコンを使った認知機能のチェックを実施していましたが、住民の方々の間に認知症という言葉への抵抗感が強く、チェックに対するプレッシャーなどで参加者が年々減少してしまうことが課題となっていました。長寿介護課と地域包括支援センターで解決策を探るなか、日本認知症予防学会に展示されていたニンテストを知りました。ニンテストは6つの香料から匂いを選択しスコア化することで嗅覚の状態を確認できます。嗅覚は認知機能とも関係性が深く、認知機能低下の前にニオイを識別する機能が低下する場合もあることから、三郷町で施策中の「一体的実施教室」に取り入れ、体重・身長・体組成の測定やその測定値から推奨する食事や運動、睡眠などの生活習慣の改善に対する助言・指導の健康啓発で介護予防に加え、認知症予防にも積極的に取り組むこととなりました。

 ニンテストの良い点と導入の決め手はどこでしたか。

ゲーム性が高く、チェックに時間がかからないところが最も良い点です。従来の方法は、もの忘れ簡易スクリーニング検査を実施していく形式でしたが、時間がかかることや機器使用による参加者の抵抗感を生むという課題がありました。三郷町でニンテストの導入を検討している際、県内の医療系大学でニンテストを使った地域向けのイベントを見学しましたが、来場の皆さんは楽しみながら受けられていて気軽に参加されていたことから、三郷町の皆さんにも安心してチェックを受けていただけると考えました。

 これからの事業展開について教えてください。

令和6年度は体組成計を使ったインボディー測定とニンテスト(嗅覚チェック)を行いましたが、特に嗅覚チェックでは、各地区ごとでデータに差があることがわかってきました。嗅覚は認知機能の低下とともに衰えることが多く、嗅覚自体の刺激によって認知機能が向上するともいわれています。今後は、これらをもとに各地区ごとの取り組みを考え、例えば「認知症予防教室 スッキリ」「いきいき百歳体操」への紹介などを行い、その他のイベントを通じてニンテストを知ってもらえる機会を増やしていきたいと思っています。高齢者の健康維持・介護予防を目的に継続的にニンテストを行い、三郷町全体で認知症予防やフレイル対策に繋げていきたいと考えています。