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結核予防会理事長
1978年自治医科大学卒業。卒業後は9年間伊豆七島を中心に地域医療に従事。 1990年から20年間WHO(世界保健機関)に勤務。1999年にWHO西太 平洋地域事務局長に就任し、同地域におけるポリオ(小児麻痺)根絶やSARS (重症急性呼吸器症候群)制圧などに貢献。2016年に国連総長からの要請で 国際健康危機タスクフォースのメンバーに就任。2019年の新型コロナウイルス 感染症の出現に伴い、国内において2020年同感染症対策専門会議の副座長、 2020年から2023年同感染症対策分科会会長。2022年より公益財団法人結 核予防会の理事長に就任。国内外の感染症対策に尽力。
結核は、新型コロナウイルスが猛威を振るった3年間を除くと感染症として長きに亘り世界最大の死亡原因である。かつては日本の国民病ともいわれていたが、近年、国内の罹患率 は下がり、ようやく低蔓延国化した。しかし、OECD加盟国 の中では依然として高く、高齢者などの保菌者が、免疫が落 ちて発症するケースや、若年者を中心とした外国出生患者の 占める割合が増加しているなどの課題もある。高齢者の場合 は、典型的な症状がないために診断が遅れ、重症化する例や 若い世代にうつしてしまう例もある。
開発途上国ではいまだに結核が蔓延している。かつての日 本のように、働き盛りの人が結核により命を落としており、社 会経済的な問題は深刻だ。開発途上国の多くが抱える課題は、 医療インフラが整っておらず、検査の専門技術者が少ないた めに、結核の発見が遅れる、あるいは見落とされていることだ。 世界の結核が終息しない限り、国内の結核の終息もない。結 核は永遠のパンデミックだ。
世界的には2035年までに結核を終息するという目標※を掲げているが、それを実現するのに必須なのは技術革新だ。結核の検査は、培養法、塗抹法、PCRなど様々ある中、LAMPは日本の技術が生み出した検査だ。結果が早くわかり、 複雑な機械を必要としないため、どこでも使える。また、検査手技や結果の判断が簡単でだれでも使える。アジアやアフ リカ諸国への技術支援により、見落とされていた結核患者の 発見にも大きく寄与している。世界の結核終息に貢献し得る検査だ。
結核の終息への貢献はもちろん、マラリアやNTDs(顧み られない熱帯病)など結核以外の感染症の制圧への貢献にも期待している。世界の感染症の制圧には、保健システムの強 化や産学官民の連携が必要だ。次世代の子供たちにどのような世界を残すのかは、今生きている私たちの重大な責任である。世界中で最大規模の感染症である結核に対して、確固た る対策をすべての国で実行していくことが、子供たちに対する 私たち大人の果たすべき重大な任務である。LAMPがその一 翼を担うことを期待している。
※結核終息戦略(End TB Strategy):2035年までに年間の結核罹患率を2015 年の時点に比して90%減少、死亡数を2015年の時点に比して95%減少、結 核にかかることによる家計の破綻をゼロとする目標、そのための方策を示した戦 略。2014年に世界保健会議で採択された。