Environment

気候変動への対応

栄研グループは、社会の持続可能性にとって、気候変動への対応が特に重要な課題であると認識しています。気候変動の原因となるCO₂を含む温室効果ガス排出量削減のため、環境マネジメント体制における省エネルギー活動として、これまでも中長期の削減目標を設定し、その達成に向けた活動を推進してきました。昨今の激甚化・頻発化する気象災害、パリ協定等の地球温暖化に対する世界潮流の変化を踏まえ、栄研グループは2050年のカーボンニュートラルを目指してその取り組みを強化します。2024年には削減目標に関して国際的NGOであるSBTi(Science Based Targets initiative)からの認定を受けています。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への対応

栄研グループは、2023年2月にTCFDの提言に賛同を表明しました。

2015年に金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨する最終報告を2017年6月に提言しました。TCFDは気候変動がもたらすリスクと機会に関して、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの要素による情報開示を推奨しています。
当社グループは、気候変動が金融市場にもたらすリスクを認識し、これまでの気候変動に関する取り組みをより一層推進するとともに、 TCFD提言に沿った情報開示を進めております。

ガバナンス

栄研グループは、気候変動に対する取り組みを経営の重要課題の一つであると認識し、代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ委員会において目標と行動計画を策定し、進捗管理を実施しています。サステナビリティ委員会で審議された気候変動に対する取り組みは、取締役会にて提案・報告され、監督されています。 なお、実績の一部は執行役の業績連動報酬に反映されます。環境マネジメントシステムとしては、経営管理統括部門の執行役を委員長とする環境管理委員会にて継続的な改善に取り組んでいます。
環境マネジメント

戦略

栄研グループでは気候変動が経済や社会にもたらす影響を重要な経営課題と捉え、TCFD提言のフレームワークに基づき、気候変動がもたらす「リスク」と「機会」を幅広く検討し、特に重要であると考えられるリスクと機会を特定しています。
またそれぞれのリスクと機会が当社グループに与える財務影響を、気候変動への対応や規制が進むことが想定される2℃未満シナリオと、災害の甚大化や感染症の拡大がより深刻となる4℃シナリオに分けてシナリオ分析を実施しました。
検討に必要な情報の取得にあたってはIEA(International Energy Agency)WEO 2022 Net Zero by 2050 やIEA ETP2020等を参照しました。
各シナリオ下における事業環境の認識と、それらが及ぼす事業影響の概要は以下のとおりです。

  •  
  • 2℃未満シナリオ
  • 気温の上昇に歯止めをかけるために気候変動への対応や規制が進み、社会全体が低炭素社会へ向かうことで、主に移行リスクが顕在化する以下の事業環境を認識してします。

    【社会像】
    世界中で気候変動への対応が積極的に行われ、温室効果ガスの排出量規制や炭素税の導入といった政策が進む。各企業はその対応コストやサプライヤーからの価格転嫁に対するコスト負担を余儀なくされる。

    【当社グループにおける事業環境の変化】
    再生可能エネルギーへの転換や脱炭素技術の革新が進められることで顧客意識の変化が生じ、低炭素社会へ貢献できる商品やサービスに対する需要が増加する。
    特に欧州におけるプラスチック規制に代表される通り、脱プラスチックおよびプラスチック資源循環の促進が見込まれ、当社グループ製品には多くのプラスチックが使用されていることから、対応が必要となる。
     

    4℃シナリオ
    積極的な気候変動への対応がとられず、感染症の拡大や自然災害の激甚化などの物理リスクによる影響がより深刻となる以下の事業環境を認識しています。

    【社会像】
    気候変動に関する規制や政策の実効性が弱く、環境への規制は事業に対して大きな効果を及ぼすには至らない。その一方で気温の上昇に歯止めがきかず、大規模な自然災害が頻発し被害の甚大化が想定される。

    【当社グループにおける事業環境の変化】
    災害による直接的な被害だけでなく、気温の上昇に伴う感染症の拡大や疾患動向の変化も想定され、検査薬を開発・提供している当社グループの社会的責任がより一層拡大する。

【気候変動による当社グループへの影響】

リスクと機会 タイプ 影響要因 当社グループへの主な影響

想定

時期

影響度 検討策

2℃

未満

4℃
リスク 移行リスク 規制 炭素税と排出量取引制度 炭素税や排出量取引制度の導入等による追加費用負担 中期 -

・省エネルギー活動の推進(省エネ機器の導入、LED化推進、DXの推進等)

  • ・再生可能エネルギー(水力・太陽光発電の活用等)の導入拡大
  • ・継続的なScope1,2の監視と削減取り組み
プラスチックに対する環境規制  プラスチック等の梱包材・製品等の一部の製品が環境規制の影響を受け、販売できなくなることによる売上減少 短~中期 -

・環境規制に対する継続的な動向調査と対策
・市場・業界動向を踏まえた製品開発

技術 新技術への投資失敗 プラスチック関連製品を中心とした環境負荷の低い製品の技術開発遅れによる販売機会の損失 中~長期 - ・製品に対する環境影響評価の実施
・環境負荷低減に向けた製品開発・設備投資の促進
市場 調達コスト増加 炭素税価格の転嫁による原材料や輸送コストの増加による利益の圧迫 中期 - ・原材料調達先、輸送ルートの最適化
評判 ステークホルダーからの評価低下 環境への取り組みが不十分な場合、株主、投資家などからの信用失墜から株価下落、企業価値低下 中期 - ・サステナビリティ経営の推進による積極的な情報開示
物理リスク 急性 異常気象の重大性と頻度の上昇 工場・物流施設への浸水や洪水被害によるサプライチェーンの寸断による販売機会の損失 長期 ・事業所およびサプライヤーの防災対策の強化
 ・事業継続計画の策定・継続的改善
慢性 平均気温上昇 感染症の拡大に伴う自社・サプライヤーの生産拠点の稼働率低下や部品供給の寸断による販売機会の損失 長期
機会 製品
・サービス
低排出量商品およびサービスの開発・提供 持続可能性が高い製品に対するニーズが高まり、製造過程におけるCO₂排出量が小さい製品や省電力につながるサービスを開発・提供することによる販売機会の増加 中~長期 - ・製品に対する環境影響評価の実施
・持続可能性を踏まえた製品開発・設備投資の促進
製品ライフサイクルにおけるCO₂排出量の少ない装置の供給による販売機会の増加 中~長期 - ・製品に対する環境影響評価の実施
・環境配慮型製品の開発(梱包・製品設計の改善)
気候適応、強靱性に対するソリューション開発 気候変動に伴う新たな感染症拡大を始めとする、疾患動向の変化に早期対応することによる売上増加および社会への貢献 長期 ・感染症動向の継続的なモニタリングと検査薬の開発・提供
R&D及び技術革新を通じた新製品開発 外気温に左右されない製品の開発を行い、品質優位性による販売機会の増加 中~長期 ・製品に対する環境影響評価の実施
・保存に対する環境負荷を低減した製品の開発
再生可能電力で稼働可能な製品の提供による販売機会の増加 短~中期 ・ポータブルソーラーパネル等で稼働可能な製品の提供
市場 気候変動リスクへの対応 気候変動への積極的な取り組みを進めることで投資家からのESG関連評価向上に伴う企業価値の向上 中期 - ・サステナビリティ経営の推進による積極的な情報開示

※想定時期の定義 短期:3年未満 中期:3年以上、10年未満 長期:10年以上
※財務影響の定義 小:1億円未満 中:1億円以上、25億円未満 大:25億円以上

リスク管理

栄研グループは、全社のリスクマネジメント体制を構築し、気候変動を含めてリスクアセスメントを年1回行っております。気候変動におけるリスクに関しては、TCFDの提言を踏まえ、リスク管理・コンプライアンス委員会、サステナビリティ委員会およびその下部組織である環境管理委員会で気候変動がもたらすリスクと機会のアセスメントを実施し、重要と評価したリスクおよび機会に対してリスクの低減および事業機会の創出に取り組みます。

指標と目標

栄研グループは、2050年のカーボンニュートラルを目指し、CO₂排出量(スコープ1+2)を2030年度に56%削減(2021年度比)する目標を設定しています。また、スコープ3は2020年度より算定しており、2030年度に25%削減(2022年度比)する目標を設定しました。

なお、スコープ1+2およびスコープ3は、ESGデータ集に実績を開示しております。

 

2021年度(基準年)

2024年度 目標

2030年度 目標

事業所におけるCO₂排出量削減
(スコープ1+2)

7,318t-CO2

19%削減

(2021年度比)

56%削減

(2021年度比)

 

 

2022年度(基準年)

2024年度 目標

2030年度 目標

サプライチェーンにおけるCO₂排出量削減(スコープ3)

84,205t-CO2

25%削減

(2022年度比)

 

※ スコープ1:自社での燃料使用や生産プロセスからの直接排出

※ スコープ2:自社が購入した電気や熱の使用による間接排出

※ スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(原料調達、製品輸送・使用・廃棄、社員の通勤・出張等)

 

Science Based Targets:科学的根拠に基づく温室効果ガス排出削減目標

栄研グループは、気候変動問題の緩和に寄与するため、「地球の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑えることを目指す」というパリ協定の求める水準と適合した科学的下根拠に基づく中長期的な温室効果ガス排出削減目標を設定し、CO₂排出量の削減に取り組んでいます。

活動実績

水力発電の活用

当社は、2050年のカーボンニュートラル(スコープ1,2が対象)を目標としており、サステナブル電⼒の導入を進めています。その取り組みの一つとして、2022年3月から野木事業所(栃木県・野木町)、2023年3月から那須事業所(栃木県・大田原市)において、発電の際にCO₂を排出しない⽔⼒発電のみを由来とする電⼒である「とちぎふるさと電気」を採⽤しました。「とちぎふるさと電気」は、栃木県企業局と東京電力エナジーパートナー株式会社が 提供する地産消費型の再生可能エネルギーで、栃木県の県営水力発電所を電源としているため電力使用に伴う CO₂排出量をゼロとすることができます。また、電気料金の一部が栃木県の環境保全事業などに活用されるため地域貢献にも寄与しており、地域との連携と地球環境配慮の両⽴に取り組んでいます。

太陽光パネル設置

野木事業所内OMC(Operation Management Center)棟、DPP(Dried Product Plant)棟、総合研究センター(北棟)の屋上に太陽光パネルを設置し、月平均約8,000Kwhを発電しています。また、発電状況が可視化できる監視モニターを通じて、リアルタイムの発電状況を発信しながら省エネに対する意識向上に繋げています。

また、那須事業所では、一部建物に設置した太陽光パネルによる太陽光発電を、社用車に導入した環境負荷の少ない電気自動車(EV)の充電に充てています。

サプライチェーンにおける環境評価の実施

栄研グループは、サプライチェーンの温室効果ガス排出量をスコープ1、スコープ2に加え、スコープ3のカテゴリ分類で算出しています。原料調達、製品輸送・使用・廃棄などの各段階の中で、温室効果ガス排出量や排出削減のポテンシャルが大きい段階を特定することで、自社だけでなく、原材料の調達先や販売した製品の使用先を含めたサプライチェーン全体での排出量削減に向けて取り組みを進めていきます。また、サプライチェーンを構成する事業者への情報提供等の働きかけにより、関係事業者の理解促進および連携を図り、協働して温室効果ガスの削減を推進します。
 

※ スコープ1:自社での燃料使用や生産プロセスからの直接排出
※ スコープ2:自社が購入した電気や熱の使用による間接排出
※ スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(原料調達、製品輸送・使用・廃棄、社員の通勤・出張等)

地球にやさしい製品の開発(環境配慮型製品)

栄研化学の製品開発は、常に環境に配慮した取り組みをしています。従来製品に使用していた塩ビ素材について、計画的に代替品へと変更することで削減し、現在の製品には使用していません。
具体的な取り組みのひとつとして、開発途上国でも使用できる結核検査システムのTB-LAMPは、保存条件を冷凍から室温にすることにより、輸送時の保冷に関わるエネルギーを抑え、さらに検査現場においても冷蔵庫を必要とせず、電力に配慮した検査を可能としました。また、検査に必要なプラスチック器材の軽減にも繋がり、廃棄に関わる環境への配慮も意識しています。
医療機器の設計開発は顧客の要求を敏感に取り込み、小型化、軽量化、省電力化、短時間処理およびリサイクル可能であることを要素に入れて取り組んでいます。最新の省エネ機器および高性能処理機器の設置は年度の目標値を決めて促進させています。

製品に対する環境影響評価を実施

栄研化学では、環境配慮型製品をお客様に提供できているかどうかを評価するために、試薬・器具製品においては、販売量、保存条件、輸送負荷、有効期限、有害物質の含有、顧客要望の有無などの評価基準、機器製品においては設置台数、耐用年数、消費電力、消耗品の有無、機器の材質及び包材、顧客要望の有無などの評価基準を用いて、製品についての環境影響評価を年1回実施しています。なお、新製品は発売前に同様の基準で評価しています。

環境省 温室効果ガス削減「COOL CHOICE」への賛同登録

「COOL CHOICE」は、環境省で推進している。CO₂などの温室効果ガスの排出量削減のために、脱炭素社会づくりに貢献する「製品への買換え」、「サービスの利用」、「ライフスタイルの選択」など、日々の生活の中で、あらゆる「賢い選択」をしていこうという取り組みです。当社は、「COOL CHOICE」の取り組みに賛同登録し、以下のように各事業所における様々な取り組みを推進しています。

各事業所における取り組み

取組み 実施概要

エコデーで一斉退社

各事業所で週一回の一斉退社日を設け、空調や照明によるエネルギーの消費削減に取り組んでいます。

クールビズ、ウォームビズ

クールビス、ウォームビズの期間を設定し、環境省推奨の夏季室温28度、冬季室温20度を参考に空調温度の緩和に取り組んでいます。

IT化による業務効率化、
印刷コスト・紙資源の削減

業務システムの運用向上とグローバル化に対応するため、2017年よりITプロジェクトを立上げ、活動してきました。基幹系業務システムのIT化を進めていくなかで、2021年4月にはほとんどの業務でペーパーレスを実現できました。

社用車のハイブリッド車の採用促進

社用車のハイブリッド車への転換を推し進め、2019年に変更が完了しました。転換前と比較して、平均ガソリン使用量が約40%削減(2020年度)しました。

エコドライブの啓発 環境省で推奨している脱炭素アクションの一つであるエコドライブの啓発を目的としたキャンペーンを実施しています。
グリーンカーテンプロジェクト 環境省で推奨しているグリーンカーテンプロジェクトの一環として、那須事業所において毎夏ゴーヤ栽培によるグリーンカーテンを実施しています。

FSC認証紙の使用拡大

会社案内や社内報等にFSC認証紙を使用し、世界の森林保全を間接的に応援しています。

グリーン購入の推進

環境負荷ができるだけ小さい製品を利用するとの思いから、エコマーク入り製品の購入を推進しています。