2016年1月号(第62巻1号)

〇昨年中はお世話になり有難うございました。皆様からあたたかいご支援をたまわり、また新しい一歩を踏み出すことができました。本年も何卒よろしくお願いいたします。
〇バースデーケーキのろうそくを吹き消すように、冬将軍が頬を膨らませ、冷たい北風を吹かせては、名残惜しそうにとどまっていた木々の枯れ葉を落としてまわっている。葉に覆われた季節には見ることのない木々たちの露(あらわ)になった枝を見て、こんなにも力強く枝を広げていたのかと、葉や実を養うために逞しく生きる姿に驚かされるこの頃である。
〇正月の年中行事に鏡開き・鏡割りがある。五穀豊穣の神である歳神様にお供えした鏡餅を下げ、切腹を思わせる刃物を避けて、木槌や手で食べやすい大きさに割った餅を雑煮や汁粉などにして食べる。このときの餅が、年の初めに賜る物という意味で「お年賜」、鏡餅の丸い形から「お年玉」、無病息災のご利益のある歳神様の魂が宿った餅という意味で「御歳魂」と呼ばれていたとして、「おとしだま」の由来とされている。室町時代の頃から餅が物品にとってかわり、現在のようにお金に変わったのは江戸時代ともいわれる。本来、目上から目下に渡す決まりで、大人でも貰えるものであったそうなので、時代とともに大人は渡す一方になってしまったことが少々残念である。
〇おとしだまを入れる袋は単に「お年玉袋」などともいうが、お年玉のほかご祝儀を入れる小さな袋は「ポチ袋」とも呼ばれる。「ポチ」などとカタカナで書いてみると、外来語のようで、フランス語で小さいという意味の“petit”や、英語で小袋という意味の“pouch”を語源とする「ポーチ」の意味と思われる。しかしそれでは「ポーチ袋」=「小袋袋」となり少々疑問が生じる。
実は関西の方言で、茶屋者や芸子に渡すちょっとしたご祝儀のことを「ぽち」と呼んでいたそうで、「ポチ袋」はこれに由来するそうである。プチやポーチ(パウチ)などの外来語がいつからわが国に定着したのかはわからないが、日本語には古くから、数量の少なさを表す“~ばかり”という意味の「~ぽっち」(例「これっぽっち」)という言葉があり、この意味の「ポチ」である。ちょうどそれだけという意味で「ぽっきり」という言葉もあり、恐らくは「ぽ(っ)」は限られた数量のこと、「ち」は小さいの意味だと思っている。
〇ローマの政治家 キケロ(BC106~43)は、「はじまりは どんなものでも小さい」という格言を残しています。良いこと、悪いこと、全てのはじまりは小さいところから。新しい一年の初めに、何か良い小さな兆しに気づいて、夢を持って育てていくにはとても良い季節です。

(大森圭子)