2016年7月号(第62巻7号)

頑張れ“日出ずる国”ニッポン!!

順天堂大学医学部特任教授/東京医科歯科大学特命教授
奈良 信雄

平成20年以降、外交官か商社マンよろしく、2ヶ月に1度、海外に出張することになった。文科省、厚労省から、「世界の医学教育、医療事情を調査研究せよ」との厳命であった。スーツケースはいつしかタンスと化し、マイルはたまり放題。数え上げれば22カ国を超える。
世界最高水準の医療レベルを誇る長寿国日本が、何も海外から吸収するものなぞない。こんな意見もあろう。が、すでに論文発表、引用数などの点で、アジア第一位の座を明け渡している現状を素直に反省すべきだ。
政治、経済、文化、国民性の異なる諸外国では、日本とそっくりな医学・医療制度はない。それぞれの国が工夫を凝らして医師を養成し、国民の健康に貢献している。もちろん日本の方が優れている点は多い。その一方で、参考になる点も見逃せない。調査の主な対象となった医学部教育では、基礎-臨床統合型教育、学生の自己学修、e-learningの整備、実践的臨床実習など、見習うことも多い。
海外では、日本という国を知ってはいるものの、医学・医療がどうなっているのか、ほとんど知られていない。長寿国とは言いながらも、そもそも海外から調査に訪れてくるのはまれだ。残念ながら、遠い国の他人事に過ぎない。
旅行く先々では、日本の医学・医療の現状を紹介し、PRに務めた。グローバル化の中、“日出ずる国”としては、日本の良い点をどしどし発信し、存在感を高めるべきだ。“医”の中の蛙(造語)で居直っているようでは、いつしか世界から取り残されかねまい。
さて、海外の視察では気苦労も少なくない。アポを取るメールが地球を何周もしてから差し戻されたのは度々。パリではポケットのカメラが蒸発。とはいえ、この機会を通じて、世界医学教育連盟会長、アメリカECFMG会長らと友達になれ、美味しいワインをご馳走になった。座席で懸命に報告書と格闘しているのを見かねたCAがファーストクラスへ案内してくれたことも(セコイ某知事とはワケが違う)。この程度の役得は大目に見ていただきたい。