2016年4月号(第62巻4号)

臨床検査(室)の評価

東京大学大学院医学系研究科 臨床病態検査医学 教授
矢冨 裕

2年毎に行われる診療報酬改定は医療関係者の大きな関心事ですが、もちろん、臨床検査に携わる者も例外ではありません。今年はその改定の年でしたが、国際標準検査管理加算(40 点)の新設が今回の改訂の大きな目玉の一つであったことは異論のないところと思います。現代は評価の時代であり、客観的な第三者評価が重要であることに関しては、病院機能の評価も臨床検査室の評価も例外ではありません。しかも、国際的に通用するものが求められています。この目的でISO15189(臨床検査室-品質と能力に関する要求事項)という臨床検査室に特化したISO国際規格の普及が求められていたことは、例えば、厚生労働省の「治験における臨床検査等の精度管理に関する基本的考え方について」の通知などからも明らかでしたが、なかなか保険点数には反映されてきませんでした。これの認定取得や維持にかかるエネルギーと費用を考えると何とかならないかと感じられる方が多かったと思いますが、これが、やっと今回、実現しました。
思い起こせば、私が臨床検査の世界に入った四半世紀前は、院内の検査部は、検査を行えば、その分、収益が上がるという状況で、病院全体の中でも稼ぎ頭の部門の1つでした。しかし、その後、臨床検査の医療における重要性は一貫して不変であるにもかかわらず、臨床検査点数の切り下げと包括化という厳しい状況が続き、現在に至っています。これは、主には医療経済の悪化によるものであると理解しますが、臨床検査のバブル期に、医療資源の効率的な利用を考え、適切な検査オーダーの重要性などの啓発活動などがしっかりとなされていれば、多少は状況が違っていたかもしれません。
近年の診療報酬改定では、臨床検査に携わる者にとってベストなものではないにせよ、今回の国際標準検査管理加算のように評価すべきものもあると思います。我々としては、その加算がついたことだけをよしとするのではなく、加算に見合う、実質が伴った活動を続けることが重要と思われます。ただ、加算だけをいただいて実質が伴わない場合、やはり、いずれは淘汰されてしまうのが世の常と思われます。