2016年4月号(第62巻4号)

旅先、街角のスナップ(4)

筑土八幡神社と桜と白鷹

機材:SONY RX1
レンズ:Carl Zeiss Sonnar 35mm/f2.0

勤務している病院の周囲には桜の名所がたくさんあります。目の前には外堀公園があり、少し歩けば靖国神社に千鳥ヶ淵も。3月下旬ともなれば、満開の桜が本格的な春の訪れを華やかに知らせてくれます。千鳥ヶ淵の手漕ぎボートから眺める夜桜はなかなか壮観です。機会があればぜひお試しください。
ただ桜の名所は人が多くて落ち着かなくて、という向きもあるでしょう。そんな方におすすめの穴場が、飯田橋駅から徒歩7- 8 分のところにある筑土八幡神社。創建はなんと約1200 年前の嵯峨天皇の時代という社で、階段になっている参道には、新宿区内最古といわれる石造りの鳥居が立っており、その参道から境内にかけて見事な桜を鑑賞することができます。飯田橋、神楽坂の桜の名所として知られていますが、訪れる人はそれほど多くなく、ゆっくり眺めることができると思います(写真は手水舎に咲く桜)。
さて、筑土八幡神社の境内には、灘の銘酒「白鷹」の樽酒が奉納されているのを目にすることができます。白鷹は全国の蔵元から唯一、伊勢神宮の御料酒として選定されているそうで、その酒がなぜここに?と思うわけですが、白鷹が造られ始めた江戸末期、まだ知名度の低かった白鷹をいち早く高く評価し盛り上げたのが神楽河岸の酒商で、白鷹は神楽坂を中心とした消費によって経営が安定し、全国にその名を知られるようになったとのこと。これに感謝し、神楽河岸周辺の産土神である筑土八幡神社に白鷹が奉納されているそうです(詳しくは散歩のついでに境内の看板をご参照ください)。
神楽坂の路地裏にはお酒は白鷹のみという名酒場もあります。桜散歩の仕上げにいかがでしょうか。

写真とエッセイ  水地 大輔

<所属>
東京逓信病院 血液内科医長 医学博士

<略歴>
1994年 群馬大学医学部卒業、東京医科歯科大学第一内科入局
2004年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了
2005年 東京医科歯科大学血液内科助手
??? 同年10月より現職

<主な展示>
・個展
「ordinary days」神楽坂 キイトス茶房(2008年)
・主なグループ展
「水」渋谷 ギャラリールデコ(2014年)
「旅ライカ」渋谷 ギャラリールデコ(2015年)他