2019年5月号(第65巻5号)

〇古来より、誕生石を身に着けていれば加護があるとの言い伝えがある。1月はガーネット、2月はアメシスト、と誕生石が1種類だけの月もあれば、12月のようにターコイズ、ブルージルコン、タンザナイト、ラピスラズリと4種類もある月もある。ちなみに5月の誕生石はエメラルドと翡翠である。
それぞれの誕生石が決められた起源は、聖書にある記述や占星術などといわれており、日本の季節のうつろいとは無関係と思われるが、翡翠の優しい緑色は、霞に覆われた山の緑を思わせるし、エメラルドの青みがかった明るい緑色は、澄み切った空の青さと、大地にしっかりと根付いた新緑溢れる木々の葉を思わせる。
気象の激しい変化で、5月というのに真夏になったような高い気温に悩まされる日もあるが、梅雨入りを控えたなかで、宝石のなかに暮らしているような美しい季節を楽しみたいものである。
〇「近代看護教育の母」と呼ばれ、クリミア戦争で負傷した兵士の献身的な看護を行い「クリミアの天使」とも呼ばれたイギリスの看護師・フローレンス・ナイチンゲールの誕生日に因み、国際看護師協会によって、5月12日は国際看護師の日と定められている。わが国では、市民・有識者たちの「看護の日の制定を願う会」の運動をきっかけとして、1990年、旧厚労省により5月12日が「看護の日」、5月12日を含む日曜日から土曜日までの一週間が「看護週間」に制定されている。
私自身のことを振り返ってみても、病気に罹り病院で心細い時間を過ごしているとき、一人ぼっちになりそうな心の垣根を越えて、心地よい距離感を保ち、明るく、優しく、疲れを見せずに一生懸命に接してくださる看護師の方々に力づけられ、安心させてもらった経験は数え切れない。こちらの気持ちをわかってくれようとする気持ちが伝わってきたとき、人はどんなにはげまされることだろうか。
〇ナイチンゲールの格言の1つに「看護を行う私たちは、人間とは何か、人はいかに生きるかをいつも問いただし、研鑽を積んでいく必要がある」がある。
高齢化が進む社会のなかで、私自身も齢を重ね、気がつくと周囲の友人・知人は皆、高齢の家族の生活をさまざまな形で支えていて、ときにその苦労を話し合い、わかり合おうとすることで、われわれもまた支えあっている。私自身、自分の世話も十分できていない身で、人生の大先輩のお世話を立派にできるわけもないのだが、失敗しながらも、人の気持ちを思い、日々少しずつでも学んでいきたいと思っている。

(大森圭子)