2019年5月号(第65巻5号)

日本の四季彩巡り(5)

ヤマツツジと新緑薫る奥入瀬渓流

撮影地:
青森県
奥入瀬渓流 ヤマツツジ

ゴールデンウィークが過ぎ、奥入瀬渓流はすがすがしい新緑の季節となる。奥入瀬渓流は春夏秋冬いろいろな風景が楽しめるが、とりわけ気に入っているのが朱色のヤマツツジが咲くこの季節である。十和田湖の子ノ口から発する奥入瀬渓流の中流付近、石ケ戸から少し焼山方面の戻ったところに三乱れ(さみだれ)の流れがある。この場所は元々流れが激しく、日中は光が差し込み奥入瀬の醍醐味を楽しめるところである。五月の中旬、三乱れの流れ付近には朱色のヤマツツジが多く咲く。元々奥入瀬渓流は赤系の色の草花の植物が少なく、秋の紅葉は黄色が主体で赤い葉はごくわずかで、この時期のヤマツツジは赤系の花風景を楽しめ、また新緑の風景写真のポイントとしても人気がある。この場所でのもう一つの楽しみはシャッタースピードを落として川の流れを遅くして撮ると、糸を引くような凪状の水面像が撮れることである。しかしこのシーンが撮れる時間が限られている。十和田湖の子ノ口の水門が午前8時に開門するので、それより前の早朝の時間でないと水量が増え、理想的な水面像が撮れない。渓流の脇にはごつごつした石が多数有り、三脚をしっかり立て、まだ陽が入ってこない暗い時刻に、5から10秒間のシャッタースピードを変えていくつかの構図で撮ってみた。まばゆいばかりの新緑、浅瀬の苔と朱色のヤマツツジをバックにとても気に入った奥入瀬の流れを撮ることができた。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。