2018年3月号(第64巻3号)

〇今年も桜前線が日本を横断する季節となった。
気象庁が発表している「2018年のさくらの開花状況」の一覧表によれば、東京では平年の開花日が3月26日のところ、5日も早かった昨年の3月21日に続き、今年は、昨年日よりも4日、平年日からは9日も早めの3月17日に観測されている。
この表では、昨年の開花日との差は「昨年差(日)」の欄に示され、数字の前に「-(マイナス)」が付けば昨年よりも早く、「+(プラス)」が付くと遅いことを意味する。このところ、季節はずれの暑さなどもあって、今のところ日本全国ずらりと「-」が並んでいる。
誰もが、春の訪れを桜の開花で確信する。努力が実ったことを「花開いた」というように、桜の開花は長く厳しい冬を乗り越え、ようやくたどり着いたひとつのゴールである。
いよいよ春を迎えようというのに、心が寒々とするようなニュースが続くなか、春の訪れの報せを受け、大勢の人で喜びを共有できることは誠に喜ばしいことである。

桜花 何が不足で ちりいそぐ   小林一茶

元は、農村で豊作を願う行事であったという「花見」。江戸後期に活躍した一茶の時代になると、現代と同様に花見そのものを楽しむ風習が全国に広まり、定着していた。パッと咲いてパッと散る潔さも桜の魅力であるが、できれば一日でも長く眺めていたい気持ちは昔も今も同じ。すっかり花が散った桜の木を眺める寂しさも同じはずである。

(大森圭子)