2018年3月号(第64巻3号)

日本の四季彩巡り(3)

早春の春爛漫

撮影地:
静岡県南伊豆町
みなみの桜

2月下旬から3月上旬にかけて、東伊豆から南伊豆に掛けて国道沿いは早咲き桜の濃いピンク色の世界に包まれる。義父が昭和46年に熱川に温泉病院を開設し、その頃から庭に河津桜が植えてあり、結婚してから約40年近く、毎月1回診療の手伝いをしていることもあり、春にはいつもこの桜に巡り会うことができる。河津桜といえば、河津川のほとりの両岸にある桜並木が有名であるが、最近は花の勢いが良くなく、枝振りも大きくない。この地にはこの季節になると100万人の観光客がくるといわれ、近年はだいぶ観光化してしまっている。これに反して同じ頃、下田駅から車で20分の下賀茂温泉沿いの青野川の両岸には枝振りの大きな、みなみの桜とよばれているピンク色の濃い桜が勢いよく咲き誇っている。この桜の種類は河津桜の仲間といわれている。この桜のまわりには菜の花が咲き、ピンクと黄色のコラボレーションが美しい。
この桜の見所は青野川がカーブを描いて流れており、両岸の桜並木と川を挟んで撮影できることである。日本中で至るところで咲いているソメイヨシノは薄いピンク色で空が曇ると桜の存在が不明瞭になる。南の桜はピンクが濃く、曇天でもその存在感が示され、紺碧の晴天時の美しさは格別であり、春爛漫を早い時期から楽しめる。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。