2015年6月号(第61巻6号)

〇ある晴天に恵まれた休日、仲の良い方達と“はとバス”に乗ることになった。
はとバスは東京観光をするためのバスで、その歴史は古く、ホームページを覗いてみると、1949年の3月から東京の昼と夜を紹介する定期観光バスとして始まったこと、以来、東京観光といえば「はとバス」と言われ続けているとあった。
1949年-終戦からまだそれほど経っていない時代に、東京観光のバスが走り始めたことは時期尚早のように思えたが、ホームページによれば、戦後復興の意気込みとして、国内観光において新しい時代の快適なサービスを提供し、国際観光客には平和な日本の姿を紹介することを趣旨としてこの会社が設立されたようであった。
湯川博士が日本人初のノーベル物理学賞を受賞し、歌でいえば「銀座カンカン娘」「青い山脈」などが流行した年でもある。この年に発行された穴のあいた5円玉は、稲穂・水・歯車という産業に関わるモチーフで飾られているが、この小さな穴からも、明るい日本の未来を見ることができただろうか。
〇はとバスの乗り場は東京駅に近いことから、まずは東京駅最寄りのKITTE(旧東京中央郵便局)の入口で待ち合わせをした。ここには何度か来たことがあったが、この建物の中にミュージアムがあると初めて知って、3階にある学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」に立ち寄り、東京大学の学術文化財である様々なコレクションを見学した。
所狭しと置かれた沢山の鳥のはく製や、古代人が織ったとは思えない、猫科の動物や鳥などの複雑な文様が織り込まれた美しいアンデスの織物など、思いがけず貴重な資料を見学して得をした気持ちになった。
〇そうこうしているうちに、バスの発車時刻も近付き、“ 'O Sola mio”という2階建てのオープン(屋根の無い)タイプのはとバスに急いで乗り込んだ。
沢山のコースの中から選んだのは、東京タワー、レインボーブリッジ、築地、歌舞伎座、銀座などをまわるコースで、一度もバスから降りることはなく、全て車窓から見学する。私にとって、どこも何度か訪れたことのある場所ばかりなのだが、2階建てという高い位置から眺める景色はどこも新鮮で、あっという間の楽しい時間であった。
ガイドさんの説明でも知ってるようで知らないことを沢山教えてもらったが、身の回りに楽しいことが沢山転がっていることも教わった有意義な一日になった。

(大森圭子)