2014年12月号(第60巻12号)

〇風や乾燥が進み空気が澄んでくる頃になると、待ち構えていたように色とりどりのイルミネーションで彩られる町は、クリスマスが近いこと、そして、今年も残りわずかであることを告げているようである。大小とりどりのオーナメントに散りばめられた変幻自在な電飾を目で追うのに夢中になっているうちに、別世界に迷い込んだかのように、どこまでも続く黄金色の光の並木道は幻想的な美しさである。そのまばゆさに遮られ、空の星にまで目が届かないことを少し寂しく感じるが、時代はいつも行きつ戻りつ。濃紺の空で慎ましやかに輝く、星達の自然の美しさにため息をつく日もまた訪れるであろう。
一年もここまで来ると時間の無駄遣いは禁物…であるが、年末の忙しさとはまた別に、クリスマスの準備に胸をときめかせる季節でもある。
家族や友へのプレゼントを考える時間もまた楽しいものであるが、もしも、楽しい気持ちで家族や友へのプレゼントを探し歩き、良いものが見つからず仕舞いにはがっかりしたとしても、あれこれ迷っている間中、その人を笑顔にすることだけを一心に思っていた自分に気づき、深い愛情や友情で結ばれていることに心が温まることだろう。その時間は「感謝」という、ひと足早い自分への素敵なクリスマスプレゼントになるに違いない。
〇フランス貴族でモラリスト文学者のラ・ロシュフコー(1613-80)の「箴言集」に「弱さこそ、ただ一つ、どうしても直しようのない欠点である。」の言葉があります(二宮フサ訳『ラ・ロシュフコー箴言集』より)。どうやら人間の「弱さ」は、何百年の時を経てどんなに時代が変わろうとも、決して無くすことが出来ないもののようです。
今年本誌は、創刊から60年を迎え、3月号には通巻700号を数える大きな記念の年になりました。1号から2号、2号から3号へ…と、途切れることなくバトンは手渡され、数え切れないほどの人の手によって本誌が作られ、支えられ、続けられてきました。そのお手伝いをしている事務局である我々のこれまでの歩みを思う時、至らなさにご迷惑をおかけし気落ちすることも多くあったと思いますが、お叱りや励まし、時にはユーモアを交えて進むべき方向を与えていただき、広くあたたかい手の平でそっと背中を押していただいたからこそ乗り越えて来られたように思います。紙面を借りて、これまでの長い間、また、本年もお世話になった皆様に心より御礼申し上げます。

(大森圭子)