2013年6月号(第59巻6号)

〇どこまでも続くのっぺりとした曇り空、目を凝らせば水滴が浮かび上がって見えるのではないかと思うほどの湿度、これだけでも気分は冴えないが、とめどなく降り続く雨に幾日も傘の下に押し籠められたり、真っ暗になった空から俄かに大雨が降りだすこともあり、気分は鬱々とする。
気温が不安定なうえ、居場所を移るたびに冷房の効き具合も変わり、暫く暑いのだか寒いのだかもわからず、ようやく嗅ぎ分けて上着を脱いだり着たりするのも面倒である。
〇気象庁のホームページには「平成25年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)」が掲載されている。これによると、梅雨入りは5月14日ごろの沖縄を皮切りに東北北部で6月18日ごろ、一方、梅雨明けは、沖縄で6月14日ごろ、東北北部では平年(過去30年間の平均)7月28日ごろ、昨年は7月26日ごろと書かれている。
水を蓄えるのに重要な時期であることは分かっているものの、およそひと月半にもわたる梅雨期はあまりに長く感じられる。梅雨前線活発化の影響で大雨が降り、土砂災害や道路が冠水してしまった地域もあり、被害は深刻である。長いところであとひと月近くも降り続く雨が、大地をおだやかにうるおしてくれるよう祈るばかりである。
〇明治3年、京浜間鉄道の敷設のためにイギリスから来日していたの測量技師のジョイネル(H.B.Joyner)が、気象観測の重要性や気象台の設置について建議したことを事のはじめとして、明治8年6月1日、現在の港区虎ノ門の辺りに気象庁の前身である東京気象台が設立され、ここでジョイネル自身による気象観測が始まったそうである。
〇「観天望気(かんてんぼうき)」という言葉がある。気象現象や生物の動きから天候をよむことをいい、たとえば、「夕焼けの翌日は晴れる」「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」などがそれである。一見、子供の遊びである下駄を蹴り飛ばして天気を予測するのと同じ程度に思えるが、夕焼けの予測は、天気が西から東に移動することから、また、ツバメの予測は、湿度が高くなるとえさとなる昆虫類が低く飛ぶことからとちゃんとした理由がある。漁師さんや船員さんなど海で働く人の、長年の経験によって培われた自然現象からの予測もかなりの的中率であるという。
気象庁の予報は有り難いが、気象台など想像もできなかった頃に探り当てられた知恵も忘れずに、自然のなかの暮らしをより多く実感できる人でありたい。

(大森圭子)