2013年6月号(第59巻6号)

隣国から困った贈り物

十文字学園女子大学人間生活学科食物栄養学科 教授
森 三樹雄

隣国中国から、尖閣諸島国有化に抗議した反日デモによる日系企業襲撃事件、尖閣諸島周辺での中国海洋監視船による挑発行為、中国から偏西風に乗って飛来した黄砂やPM2.5などによる大気汚染被害、閣僚の靖国神社参拝への反発、中国から輸入した危険食品による健康被害、中国系資本による日本の水資源買収などが起こっている。健康面についても、中国で発生した鳥インフルエンザH7N9型やダニ汚染による重症熱性血小板減少症候群(SFTS)による感染症など、非常に危険な疾患が発生している。これらの事象のいくつかは、中国への旅行や出張を控えることで被害に遭わずにすむ。しかし、日本国内に侵入してくる鳥インフルエンザや大気汚染被害物質に対しては、マスク、うがい、手洗いなどの予防措置、輸入食品については、原産国確認するなど個人の自己責任で防御することになる。中国は世界第二の経済大国と称しているが、空母や戦艦を増強して軍事力で、近隣諸国に圧力をかけている。最近中国で発生した鳥インフルエンザH7N9型の感染症は、中国の東部地域に発症していたが、現在は中国全土に拡大している。5月10日現在、中国での感染者は131人、死者は32人で死亡率は24.4%と高い。厚生労働省では、人から人への感染は確認されていないが、「日本国内で感染者が出るのは時間の問題」として、中国からの帰国者による日本国内での感染拡大の可能性を考え注意を喚起している。厚生労働省でも、H7N9型を感染症法に基づく「指定感染症」に指定し、患者の強制的な入院や就業制限などの措置が最長2年間取れるような対策を立てている。指定感染症への指定は、新型肺炎(SARS)、H5N1型の鳥インフルエンザに続き3例目である。このように、鳥インフルエンザや危険な輸入食品などに対して、個人が十分に注意して防がねばならない。