2012年9月号(第58巻9号)

〇9月を迎えても、夏の季節を延長するのが良いと思うほどの暑さが続いていたが、耳をすませば聴こえてくる虫の声や澄んだ日射しに漸くうっすらと秋の気配が漂いはじめた。
〇明治の頃より官公庁や学校の衣替えは6月1日と10月1日に決められている。これでいくと冬服の季節は8カ月、夏服が4カ月と冬服で過ごす季節が圧倒的に長く、これに春と秋に着る間服の季節が重なっている。なお、奄美群島や沖縄諸島などの温暖な南西諸島では夏服と間服の季節がひと月ほど長いそうである。
狭義でいう衣替えとは別に私服では、衣服の形や素材の種類が豊富になり、冷暖房が完備されている昨今、寒暑が激しい屋外に居るとき以外、間服で居られる間が長くなった。
おかげでひと昔前の極く厚手のスーツの上下も出番がめっきり無くなってしまった。
〇この頃は、急にストンと気温が下がり肌寒い夜や冷たい雨の降る朝もまま訪れるようになった。
にわかにうすら寒い風情に見える薄っぺらい肌がけ布団や、半袖の衣服ばかりが詰まった引出しなどを恨めしげに眺めながら、この週末は思い切って衣替えをしようと心に決めた。

(大森圭子)