2012年3月号(第58巻3号)

〇千年に一度といわれる大規模な震災から1年が経ちましたが、人類始まって以来といっても過言ではない厳しい自然災害との闘いのなかで、これほどの被害を前にしては、1年の歳月はあまりにもあっけなく過ぎ去ってしまったようにも思います。
原発の問題も暗礁に乗り上げており、放射能付着の問題などもあって東京ドーム23杯分といわれるがれきも6%ほど撤去が進んだ状態に留まっているようです。しかしここへきて各県からの積極的な受け入れの申し出により、がれきの広域処理に向けての作業がようやく動きだし、被災地の復旧復興に向けての道に光がさしこんでいます。
〇連日の震災関係のニュースでは、来る日も来る日も解決をみない山積みの問題、新たに発生した問題に気持ちも落ち込みがちですが、震災関係の報道番組などで被災地の方たちが「下ばかり見ていてはしょうがない」、「ボランティアに来てくださった方に申しわけがない」と、深い悲しみや喪失感と懸命に闘って前向きに毎日を過ごされているお姿、被災地から私たちに笑顔を送ってくださることが何よりの救いであり、そしてまた、比べ物にならないほどの小さな問題にくよくよと悩むとき、被災地の方から勇気と希望をいただくことも少なくありません。
〇このたび本誌では「東日本大震災―あの日から一年:医療支援と今後の備え」と題した座談会を開催し、現編集委員長である宮地勇人先生のご司会で、被災地にて医療支援を行われた先生に様々なお立場からお話をうかがいました。
被災地で実際に支援を行われたのでなければ分からない被災地での状況を詳しくおうかがいすることができ、大変考えさせられましたが、一番印象に残った言葉が「東日本大震災を風化させないこと」でした。
このたびの震災により日本列島全体が歪み、大変残念ながら、さらなる大震災が起こり得る可能性が高まった状態といわれています。最近では手元の電子機器に目を奪われ、今目の前にあるものを見る機会が減ったようにも思いますが、すぐそこにある自然災害の危機からは目をそらさない勇気と、今回の震災から得られた教えを活かした備えが大切であるとあらためて思っております。
被災地ではまだまだ震災による爪痕が大きく残されたままだと聞き、近く編集室でも被災地に伺って取材を行いたいと考えております。

(大森圭子)