2012年3月号(第58巻3号)

少子高齢化と小児科医

東京医科大学 小児科
河島 尚志

少子高齢化が叫ばれている。この言葉が新聞をにぎわすようになり、小児科への入局が激減した。これに対し、厚労省は小児科・産婦人科だけは特別として、研修制度のなかで必修科とした。それでも入局者は増えず、小児科・産婦人科コースを研修定員とは別に募集するよう指導が入り、さらなる応援があった。最近になり、ようやく小児科志望の医師の数の減少は止まったようである。以前は小児科学会の入会が全国で毎年500人ほどいたのが、現在はなんとか300人台を保っている。全体の数は安定したが、地域格差はさらに顕著となっている。某大学は毎年10人から20人以上入局があり、こういった病院は都心に集中、入局のないところは数年間に一人といったありさまである。この傾向はまったく改善なく、最近では悲鳴を越えて、もうあきらめているという声さえ聴く。それでは、実際の小児科の仕事は少子化により減ったのかが問題である。夜間の救急患者数は以前より確実に増加、ワクチン業務は増加、在宅医療患者増加など仕事量は以前よりはるかに増えている。また、理由は不明であるが、低出生体重児の数は増え、検診患者は増加、それだけでなく、高度医療の対象者は増えて、食物アレルギー患者は以前の3倍から5倍、大人の病気と思われていた炎症性腸疾患小児患者の増加などなど、一人一人にかかる時間は数十倍に増えている。
産科の入局者も一時減少したと聞いた。なんとかしなければと思っているのは私一人ではないようである。小児科はまだいいほうといわれる。外科志望の医師も全国的に減っている。みなどこへいってしまったのだろうと思う。学位や研究で医師をしばって研修や出張を決めていたのは今は昔、現在は、専門医を何人かかえ、教育システム、手術件数などまでみて研修を決めているようである。本当に大事なことは、システムより人間関係ではと思うのは、時代錯誤であろうか。