2012年2月号(第58巻2号)

〇古く、季節の変わり目には邪気が生じるとされ、2月には節分の行事が行われる。邪気払いのために、魔よけとして柊に鰯の頭を刺したものを玄関先に飾り、歳神様にお供えをした炒り豆をその年の年男もしくは一家の主が「鬼は外、福は内」とかけ声をかけながらまくというのが一般的である。このときの豆は大豆のほか、北海道、東北、信越地方では落花生が主流で、九州の南部でも落花生を使う地域があるときいた。初めはどこも大豆であったそうだが、地面に落ちてしまうと食せないに大豆に比べ、落花生ならば拾って食べられる合理性から、昭和30年代から落花生が大豆に取って代わり、次第に主流になっていったようである。
〇節分の行事は、中国から日本に伝わり平安時代から行われている「追儺(ついな)」や「鬼やらい」などと呼ばれる疫病払いの儀式が起源とされている。古くは宮中行事であり、「土牛童子」と呼ばれる人形が宮殿の各門に置かれ、この中に邪気を集めこれを捨てることで邪気が追い払われるとされていた。これに寺社で行われる「豆打ち」の儀式などもあわさって豆をまくようになったともいわれている。
比較的新しい風習では、「恵方巻」「招福巻」などと称した太巻きをその年の恵方に向かい切らずに黙々と食べるのが流行である。起源には諸説あるが、江戸時代からあった習俗のようで、太巻きを鬼の金棒になぞらえ、あるいは福を巻き込んでいると見立てて、縁が切れないようにと丸ごと一本食べるのである。縁起担ぎとはいえ太巻きを切らずに食べるのはちょっとした意気込みが要りそうである。
〇太巻きは日本のものと思い込んでいたところ、韓国ドラマを見ていると、ビニール手袋をはめた女性が甲斐甲斐しくお弁当に太巻きを作っているシーンが多いことに驚かされた。これは日本の海苔巻が韓国でアレンジされたもので、キム(海苔)パプ(米飯)という名で呼ばれているそうだ。見た目では違いは分からなかったが、ご飯には、酢の代わりに塩とごま油を混ぜ混むこと、海苔は塩とごま油で味付けされた韓国海苔を使うこと、具に生ものは使わないことなど、味は全く違うようである。美味しそうなので作ってみようと思い立ち料理本を見たところ、卵焼き、ホウレンソウ、たくあん、練りもの、かにかまぼこ、牛肉、えごまの葉…など沢山の材料と手順を見て挫折してしまった。近所の持ち帰り寿司屋の太巻きを買い求めそのときはよしとしたが、いつか挑戦したいと思っている。

(大森圭子)