2011年12月号(第57巻12号)

〇例年、10月の声を聞いたあたりで早くも御歳暮商戦が開始され、デパートには特設売場が設けられ、過去に一度だけお取り寄せをした店舗からですらお歳暮用贈答品のカタログが送られてくる。
今でこそ多種多様な品が贈答用に使われているが、本来歳暮とは、親の健康や長寿を祝福する目的で、塩鮭、塩鰤、するめといった魚類や、米や餅を用意し持参したことが始まりである。
一方、中元は盆歳暮とも呼ばれ、決まって饂飩や素麺といった麺類、菓子、果物などの食品か、新盆の家には特に提灯や灯篭を贈ることになっていた。今でいう中元は、この日本古来の風習に、天官・地官・水官と呼ばれる神がそれぞれ生まれたとされる三元(上元・中元・下元)の日に祭事を行う古代中国の道教「三官信仰」から、ことに、善悪を見分け人間の罪を許す神―地官を祭る中元の日の習わしが付加されたものだそうだ。
贈り物をする風習は国によって異なり、欧米ではバレンタインや復活祭が思い浮かぶが、日本では、中元、歳暮の品を贈り合うほかにも、成人式、結婚式などの人生の節目や葬式、法事やお盆などの信仰行事など、いわゆる冠婚葬祭の折にも行われる。彼岸には牡丹餅、三月節供には菱餅、五月節供にはちまき、お祝い事では赤飯、引越しでは引越しそばを近所に配る習慣までをも含めると、何かと贈答を交わす機会が多いようである。
古くはその根底に、神様に御供えしたもの、もしくは同じものを分け合って食べることで、相互の関係を明確にしより深めたいという願いがあった。現代でも相互の関係を深めたいという願いはそのままに、感謝やお祝いの気持ちから贈り物をすることが多いように思う。贈り物を入れてきた重箱や風呂敷に半紙やマッチを入れて返す、あるいは重箱の赤飯を一口残して返すといった、贈り主の気持ちを有り難く受入れたことを伝える古いしきたり、高い精神性に学び、今年も本誌を支えてくださった沢山の方達へ精一杯の感謝をお贈りし、またほんの僅かでもお返しが出来るよう来年も奮闘したいと思っております。
本年も本誌にあたたかいご支援をたまわり、誠に有難うございました。今後も変わらぬご支援をいただきますようお願い申し上げます。

(大森圭子)