2011年9月号(第57巻9号)

〇秋は台風の季節である。大型だった台風15号では浸水や農林関係の被害をはじめ、いまだ大きな爪痕を残している。私事では通勤で使っている電車もこの台風の強風のために運転を見合わせた。ちょうど通勤時間にかかっていたこともあり、閉ざされた改札前には、事態に戸惑う人、電車の運転が再開されるのを待つ人でみるみる溢れ、タクシー乗り場には気が遠くなるほどの長い行列ができ、駅上にあるデパートのベンチまでもが人で埋まっていた。まだ記憶に新しい、都会での自然災害への脆弱さをまたも見せつけられる結果となった。
台風が通り過ぎ、少し前までの猛暑がうそのように思えるほど肌寒くなった。秋の日は釣瓶落としというが、気づけば辺りがすっかり暗くなっていることに驚き、腕時計を確認しては、日照時間が短くなっていることに少しがっかりするこの頃である。
〇この季節になると、例年、秋田の農家の方から直接お米を分けていただくのを楽しみにしている。今年は少し遅れて注文伺いの便りをいただいたが、はじめに放射線量の検査を無事に終えたとの報告があり、無事に検査を終えられて何よりと安心した。
〇米の実りを心待ちにしているのはスズメとて同じであろうか。スズメは寒い地域を除き世界ではヨーロッパ、北アフリカ、アジアの大部分に生息し、人家のあるところや農耕地に棲んでいる。雑食で、雛を育てる時期は主に昆虫を食べるが、秋冬には田畑で穀物を荒らすことから害鳥の扱いもされる。しかし、主に稲に食害を起こしているのはニュウナイスズメという別の種だそうで、スズメは穀物を食べる代わりに害虫も食べてくれるので益鳥としての役割が、むしろ大きい。スズメにとって、ニュウナイスズメと混同されがちな点は迷惑であろう。
時折、街路樹の近くを通りかかると、ひっきりなしに囀り続ける無数のスズメの鳴き声を聞くことがある。見上げてもどこにいるのかまるでスズメの姿は見えないのだが、体温の維持や安全性などを目的として、多いときは数百羽も集まって樹上にネグラを形成しているそうである。まるで鈴の生る木のような賑わいだが、「スズメ」のスズは「鈴」に由来するという説があり、「メ」には群れという意味があるそうだ。他にも各地にお喋りの面から命名された方言があり、沖縄では「ヨモンドリ(読む鳥)」、和歌山県や四国などでは「イタクラ(イタ(イタコ・ユタ):巫女の意味、クラ(クロ)小鳥の意味)」とも呼ばれているようである。富山のある地域では古く「ノキサキノオバサン」という呼び名があったときいたが本当であろうか。

(大森圭子)