2011年9月号(第57巻9号)

「机の上の検査室」と「診療マトリックス」

財団法人 緒方医学化学研究所 常務理事
只野 壽太郎

1981年Lundbergが診療行為は、まず医師が患者の問題点(主訴・症状)を聞き、問題点を解決する為の検査を頭(Brain)に浮かべオーダーし、返却されたデータを再び頭(Brain)に入れて問題点を解決するというBrain to Brain理論を発表しました。この論文に対する素朴な疑問は、医師はどの位の検査情報が頭に入るかでした。
頭に入れる臨床検査の情報量を確かめる為、教科書から検体検査に関係ある疾患を拾い出すと約1600疾患ありました。また、現在測定可能な検体検査は約2000項目ですから、疾患と検査の組み合わせは320万通りです。これに、日常臨床で遭遇する主訴・症状70を加えると医師が診断する迄のBrain to Brainの選択肢は2億通りを超えてしまいます。
この膨大な情報を医師が頭に入れる事は不可能と考え、検査情報を一切暗記しなくても良い方法として「机の上の検査室」を考えました。これは、診察室に診療に必要な検査情報にアクセス出来るツールとして「机の上の検査室」を置き、医師はソフトとして提供される「診療マトリックス」を外付けのBrainとして診療する環境です。
つまり、主訴・症状(68)、疾患(1600)、臨床検査(2000)で情報の塊を作り、これに縦横にアクセス出来る環境をWEBで提供するシステムが「診療マトリックス」で、目的は医師から暗記作業を解放することです。
「診療マトリックス」は主訴・症状と特に注意すべき疾患、関連する検査と検査値、スクリーニング検査と検査値、Common diseaseと基本検査、臨床検査1000項目解説・基準値・予期せぬ値を見た場合、病理組織・細胞診所見などがマトリクッス状に縦横に検索出来ます。
アクセスした先生方からは「診療後に見落としが無いか再確認に使っている」や「診療マトリックスを認めると、勉強しない医師を認めることになる」などの意見が寄せられています。
「診療マトリックス」で検索しご自由にお使い下さい。