2010年5月号(第56巻5号)

〇木々たちが一斉に新緑に覆われ、薫風が心地よい季節となった。しかし今年は気温変動が激しいので引き続き寒さ対策が必要な状況である。過去30年間の大気現象、降水量、雲量などの気象データを元に各月の天気を予測する「天気出現率」によれば、5月の東京は最低気温13.2℃、最高気温24.4℃となっており、日々穏やかに気温が上昇する傾向になっている。一方、実際の気温は東京で、最低気温は5月1日の11.4℃、最高は5月6日の27.8℃と気温差も大きく、日々上がったり下がったりでバラつきが多い。風邪をひいている人も多く、朝の衣服選びに慎重さを求められる日々である。
〇4月からNHKの連続テレビ小説で「ゲゲゲの女房」が放映されている。「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげる氏の奥様が書かれた小説がドラマ化された内容だ。「ゲゲゲ」とは何かずっと不思議に思っていたところ、水木しげる氏(本名:武良 茂〈むら しげる〉)が幼い頃に自分の名前をうまく言えず「ゲゲる」と言っていたことから「ゲゲ」があだ名となり、この名を付けたのだとか。水木氏の出身地の境港には136体の妖怪のブロンズ像が飾られた「水木しげるロード」があり、現在、水木氏が在住している調布市の天神通り商店街にも数々の妖怪のモニュメントが道行く人を眺めている。名誉市民である水木氏とは比較にもならないちっぽけな存在ではあるが、私も調布市民のはしくれ、調布市からほど近い三鷹市に位置する深大寺境内の「鬼太郎茶屋」には、バスを使い10分ほどで到着できる。ここには鬼太郎グッズや目玉親父の棒つきキャンディーなどの菓子が販売されていて楽しい。
「化け物」という定義の中には「妖怪」、「幽霊」が含まれるが、幽霊が神出鬼没で特定の人間を標的にするのに比べ、妖怪は出る場所や時期が決まっており、避けようと思えば避けられるのが特徴とされる。山には「山姥」や「天狗」、道には「ぬりかべ」や「砂まき」、家に居るものに「納戸婆」や「座敷童」、家を訪ねて来るものには「一つ目小僧」、水には「河童」というように場所によって妖怪の種類が決まり、その多くはたそがれ時に出没するとされている。鬼太郎に登場する妖怪「子泣き爺」が阿波国(徳島県)出身、「砂かけ婆」が大和国(奈良県)出身などと特定されているのも、水木氏が民俗信仰を元に設定しているのではないかと思う。
正式な名前は忘れたが、幼い頃に何かの付録で手にした水木氏の“妖怪大図鑑”を読み、怖くなってトイレに行けなくなったことを覚えている。怖がりのクセに怖いもの見たさのクセは幼い頃から変わっておらず、小さな音にびくつきながらも夜更けにこんな駄文を書いている自分である。

(大森圭子)