2009年12月号(第55巻12号)

〇本年も『モダンメディア』にご支援をたまわり、有り難うございました。なにとぞ今後とも変わらぬご愛顧をたまわりますようお願い申し上げます。
〇古くより受け継がれているものにはそれなりの理由があると感じる。慣用句もそんな一つだ。慣用句は誰もが知っている単語を繋げた比喩であり、自分が経験した状況を、聞く者・読む者に一瞬にして伝えることができる。また、慣用句と区別がつきにくいが、先人からの格言や教訓である諺のほうは、毎日の生活の励みとなり、人や物に対する感謝を教え、いつもわれわれの隣り合わせにある失敗を食い止め、あるいは一寸皮肉な言い回しで起こってしまった失敗を忘れさせないようにさせてくれている。何れも長い年月を経てもなお私たちに共感を呼ぶ優れた文化である。
しかし長年続いているせいでいつの間にか誤りが生じ、それがさも正しいように使われているものも少なくない。最近ではこれを取り上げたクイズも多く見られるが、それによると「的を射る(〇)」が「的を得る(×)」、「うろ覚え(〇)」が「うる覚え(×)」、「采配をふる(〇)」が「采配をふるう(×)」などが誤りの代表選手らしい。中でも面白かったのは「海の藻屑(〇)」が「海のモズク(×)」、「枯れ木も山の賑わい(〇)」が「瓦礫も山の賑わい(×)」で、これらの誤りは微笑ましくすら思える。一方、「濡れ手で粟(〇)」が「濡れ手で泡(×)」、「右へ倣え(〇)」が「右へ習え(×)」などの漢字の間違いも多いようである。
言葉に関わる仕事をしているのにお恥ずかしい話だが、私自身は「虎の威を借る狐」を「虎の衣を借る狐」と長い間思い込んでいた。これも読み書きをする機会が少なくなっていることが原因だろうか、はたまた探究心が薄れ何でもすぐに受け入れているせいだろうか。
深く反省し、気を引き締めて頑張ります。来年度もよろしくお願いいたします。

(大森圭子)