2008年12月号(第54巻12号)

〇こう寒くなってくると、朝は布団からでるのが嫌になり、敷布団に貼り付いてあと5分、あと1分とつい寝坊をしたくなる。
人の睡眠は眠りの深さで、レム(REM)睡眠とノンレム睡眠の2種類に分けられることがよく知られている。REMとは“Rapid Eye Movement(急速眼球運動)”の意味である。レム睡眠では脳は覚醒状態で体は弛緩した状態にあり、その名のとおり瞼の下で眼球が水平に動いている。一方、ノンレム睡眠は脳も体も休んでいる深い睡眠状態である。人は睡眠の間、この1セットを約90分で繰り返しているといわれ、体とともに脳までをも充分に休ませる高度な睡眠を果たしている。しかし全ての生物がこのような睡眠形態をとっているわけではない。例えば、マグロやカツオなどの魚やイルカやオットセイなどの海洋性哺乳類は、大脳を左右交互に眠らせる「半球運動」という睡眠方法で眠り、水中を泳ぎ続ける。また、渡り鳥達も半球睡眠を行い、けなげにも空を飛びながら片目をつぶって睡眠をとっているのだそうだ。「けふからは 日本の雁そ 楽に寝よ」という一茶の句があり、渡り鳥達の労をねぎらってのあたたかな気持ちが伝わってくるが、やれやれ本当にご苦労なことである。
牛や馬などの草食動物に至っては、筋肉を弛緩させ外敵に気づかない状態では命を奪われる危険性が高いため、常にうとうと状態でしか眠ることができない。一方、ライオンなど襲われる心配が無用の動物では、獲物を得る時以外は殆ど呑気に眠っている。睡眠とは、何とも不公平なものである。恵まれた環境にあって、より長い睡眠を望むのは贅沢というもの。寒さになぞ負けてはいられないのだが……。
〇本年も『モダンメディア』をご愛読たまわり、誠に有り難うございました。何卒今後とも変わらぬご愛顧のほどお願い申し上げます。

(大森圭子)