2008年12月号(第54巻12号)

色紙に描く季節の草花

シャコバサボテン

色紙の絵も今回で12 回目となった。今までの描き方は、穂先の細い面相筆で草花の輪郭をとり、あとでそれに色付けをする方法であった。それは線描画であるが、今回のシャコバサボテンの絵は、太い筆にいきなり絵の具をつけそれを画仙紙の上にぶっつけるように描くので、まるで違う。没骨法(もっこつほう)とか付立て(つけたて)とも言うが、この書き方が水墨画で重宝がられるのである。次回から、いよいよ和紙に描く水墨画に挑んでみたいと思うが、本号はその手ならしのつもりでシャコバサボテンを水墨画風に描いてみた。
 このシャコバサボテンはいかにも西洋渡来の草花の感じがして、かつては必ずしも私の好みの植物ではなかった。通常赤い花が咲くのをよく見る。ところが黄金色の花が咲くゴールデンカクタスの種類を歳暮にいただいてから、見れば見るほどなんと天女の舞を思わせる微妙な形をしていて、いつまで見ていても見飽きない。絵に描けば一層その花弁の反りくり返った形に魅せられた。しかしなかなか絵には描きにくい花である。絵に描く以上は、実物以上に美しく描けなければいけないとしたものであるが、果たしてそうした絵になったであろうか。

絵とエッセイ 藤本 吉秀

大正15年(昭和元年)生まれ。昭和の年号がそのまま年齢になった。

<職歴:内分泌外科医>
もと東京女子医大内分泌外科教授。1987~1989の2年間国際内分泌外科学会会長を務めた。
今は癌研有明病院、日本赤十字社医療センター、調布東山病院で甲状腺診療をしている。

<絵の略歴>
昭和59年、八丈島から贈られた黄色のシンピジウムがとても美しいので色紙に描いてから、季節の草花を色紙に描くのが趣味となった。平成10年、柏市で甲状腺外科検討会がひらかれた時、会場の近くの画廊で色紙の個展をした。
その後、松下黄沙(Group 82)について墨絵三昧。
2人展(平成14年)、12人展(平成16年)をはじめ、春、初夏、秋にそれぞれ各種グループ展に出展。

<運動>
ずっと以前のことになるが、学生時代、一高、東大を通してボートを漕ぎ、昭和24、25年8人で漕ぐエイトで連続全日本選手権制覇。

はじめの1年間は、「色紙に季節の草花を描く」をテーマにして出します。
次の1年間は、「墨画にのめりこんで」として、風景、植物、仏像など何でも取り上げて描きます。