2007年11月号(第53巻11号)

〇アメリカの老舗、人気のドーナツショップが東京に数店登場し話題になっている。この寒空の下、軽く2時間は待つのではないかという長蛇の列が常に出来ている。噂のドーナツをぜひ一度食べてみたいと皆が思っているのだ。セットの箱売りであればあまり待たされないと聞き並んだところ、意外にもあっさり買うことができた。悪いクセで手に入った時点で半分くらい気が済んでしまう。でもやはり味も美味しかった。

ドーナツの発祥の地はオランダとされ、18世紀初頭にはすでにドーナツの原形とされる揚げ菓子(Oliebol)が存在していたそうである。古くは生地に胡桃等のナッツを練りこんだり、ナッツで飾り付けをしていたらしく、言葉の由縁は「ドー」は生地の意味、「ナツ」は木の実の意味の「ナッツ」である。真ん中に穴が開いているのは、ある少年が母親が揚げるドーナツの真ん中がいつも生焼けなのを気にして穴を開けるように提案したことをきっかけとする説や、もともと真ん中にナッツを乗せて飾っていたところ、ナッツが無かったために変わりに穴を開けたことをきっかけとする説など数多くある。一方、アメリカ中部のネブラスカ州ではドーナツに穴を開けることが禁じられているという。かなり古くからの州法だそうだが、何か不吉な言い伝えによるものだろうか。

〇晩秋の寒さを表現する季語には、「漸寒(ややさむ)」「そぞろ寒(そぞろさむ)」「うそ寒(うすらさむ)」「夜寒(よさむ:まだ少しあたたかな昼に比べ、ぐっと気温が下がる夜の寒さ)」「冷まじ(すさまじ:荒涼とした寒さ)」など数多くあり、「寒い」とただひと言に言ってもいろいろあるものだと驚かされる。秋の訪れと秋の終わり、そして冬の訪れが入り混じるこの頃の冷ややかさは、たとえ気温が同じであっても肌には違って感じられる。四季のうつろう日本に過ごし、それぞれの寒さを感じ分けることができる感性を持ち合わせていることに幸せを感じるこの頃である。

(大森圭子)