2007年3月号(第53巻3号)

〇桜の開花予報を耳にする頃になった。この冬は冬型の気圧配置が長く続かず、記録的に暖かい冬となり、降雪量も全国的に少なく、雪深い地域でも最深積雪の最小値を更新した地域も多くあった。がしかし、それも3月初旬まで。それ以降は平年並みかあるいはそれを下回る寒さが続いている。この寒さに桜の蕾も以前より縮こまっているように見える。そうでなくとも多忙なこの時期、疲労に加え、気温変動が激しいせいで体調を崩している方も多くおられるのではないだろうか。2月のあたたかい日々が恋しく感じるこの頃である。

〇春は人事異動の季節である。江戸時代にも、半年契約で雇われていた奉公人が期限を終えて交替する“出替わり”の時期が旧暦の2月と8月であったそうで、2月のほうがちょうどいま頃の時期にあたる。入社や入学を機とした一人暮らしなども含め、4月からの新生活に向けていまが引越しのピークであるのは、今も昔も変わらずで、引越しはこの季節の風物詩のひとつといえるようだ。

現代の引越しは、運送会社が至れり尽くせりのプランを用意し、お金さえ出せばいくらでも楽を出来るようになっているが、江戸時代ではリヤカーの前身である木製の台車・大八車に全ての荷物を乗せて移動していた。現代人と違い荷物も少ないから、大八車で手軽に引越しをしていたようである。大八車という名前の由来は、発明者の名前からきたという節と、「代八車」と書いてこれ一台で八人分の働きをすることを由来とする節があるが、重い荷物をたくさん運ぶ場合にはバランスをとるのが難しく、3~4人がかりで運ばなければならなかったようである。

〇ご多分に漏れず、当編集室も3月末に引越しをすることになりました。表紙4ページにご案内を掲載いたしましたので、ご高覧のうえよろしくお願いいたします。

編集室が現在の東京都・北区に移動しましたのが、1990年6月のことです。『モダンメディア』の約53年の歴史のうちおよそ3分の1をこの地で過ごしたことになります。久方ぶりの引越しで編集室の荷物もだいぶ増え、大八車でというわけにはとてもいかない状況です。

(大森圭子)