2006年10月号(第52巻10号)

〇2001年9月度の編集会議議事録には第2代編集委員・河合忠先生に新しく連載をご担当いただけることになった旨が記されています。この連載こそ翌年、第48巻2号の誌面上で産声をあげた「ウイスキー・ラベル物語」です。初回の「なぜウイスキー・ラベル物語か」では、(1)決して「酒好き」とはいえない河合先生が、「なぜウイスキー・ラベル物語(を書くの)か」、(2)「なぜウイスキー(ではなく)・ラベル物語か」という疑問に答えるべく楽しいエピソードが紹介されており、ウイスキーの綴りに[Whiskey]と[Whisky]の2種類を発見したことをきっかけに調査を進めるうち、ウイスキーのラベルにまつわる様々なエピソードに遭遇したことが書かれています。企画をいただいた当初は“これらのエピソードを4~5回のシリーズで紹介”とのお話であったと記憶しておりますが、最終回では24回を数え、ウイスキーの歴史もまたその味わいのごとく奥深いものであったことが明らかになりました。足掛け6年もの歳月にわたり、お忙しい時間を縫うようにして醸造所や資料館に足を運ばれ、更なる調査・取材を重ねて本シリーズをまとめてくださった河合先生に心より感謝申し上げます。すっかり本誌の顔となったシリーズが無くなるのはクラスメイトが遠くにいってしまうようで寂しいのですが、本シリーズをベースに書籍を出されるというお話もあるご様子。本誌の「書籍ご紹介」欄でのご案内をどうぞお楽しみに。

〇10月31日はハロウィン。キリスト教で全ての聖人を記念する日“万聖節(11月1日)”の前夜祭であることから、All Hallow’s Eve → Hallow E’enと呼ばれるようになったともいわれる。ハロウィンは古代ケルト人の儀式(Samhain:収穫の終わり等の意味)を起源としている。古代ケルト暦の年末(10月31日)には死者の魂(悪霊)が戻り、妖精とともに悪さをすると考えられていたことから、悪霊を追い払うために恐ろしい仮装をし、また鎮魂のための供物として、収穫した作物を各家庭から集めて回ったという風習が始まりとされる。町を彩るカボチャのランプは、堤燈のジャック=ジャック・オ・ランタンと呼ばれるものであるが、これは生前の行いから天国にも地獄にも行かれず、カブの提灯を持って天国と地獄の間を彷徨うことになったジャックという男の話(アイルランドの民話)に由来している。アメリカに辿り付いたアイルランド人が、カブよりもカボチャのほうがくり抜いてランプにしやすいことを知り、カブがカボチャになったのだとか。Samhainでは、妖精や悪霊の気をそらすためにわざと人の居ないところに焚き火をしたそうなので、カボチャのランプにその趣旨が重なったのかもしれない。カボチャのランプ・仮装・お菓子を集める子供のことは知っていても、ハロウィンがいったい何のお祭りだかよく分からなかったのであるが、これからはお盆・大晦日・収穫祭をあわせたものだと思うことに決めた。

早くも「お歳暮」「年賀状」「正月」等の文字をちらほら目にする時期となった。年末に向けての多忙な日々を考えるとぎょっとするが、本邦は古代ケルト暦に非ず。2カ月の余裕がなんと有り難いことか。

(大森圭子)