2006年10月号(第52巻10号)

心に残る、山と花

燃ゆる涸沢

夏が終わり、9月半ばにはほとんどの花が消え、草紅葉が美しくなります。ナナカマドが赤く、ダケカンバは黄色く色付き始め、四季を通じて一番色彩豊かになり、まさに「山装う」季節となります。

上高地から通称上高地街道を梓川沿いに行くと、穂高連峰、槍ヶ岳、蝶ケ岳への登山道の十字路に横尾山荘があります。まず第1日目はこの山荘に泊まり、翌朝、梓川にかかる横尾大橋を渡って涸沢へ向かいます。登山者の大半は涸沢に向かうようで、沢沿いの登山道には長い列が出来ます。しばらく行くと屏風岩の岩壁が見える河原に出ます。屏風岩にも紅葉が見られ、近くなるとともにその裾野にも鮮やかな紅葉が見えてきました。横尾本谷橋につくと黄色や赤の見事な風景が目の前に広がります。橋を渡り、屏風岩の末端を巻くように急な登りを行きます。横尾から約4時間で前穂高、奥穂高、北穂高に囲まれて、しかも全山紅葉の絶景が広がりました。ここは有名な紅葉のメッカ涸沢(2,309m)です。

予約しておいた山小屋にザックを置いて、一休みしてからカメラを持って紅葉ウオッチングに出かけました。テント村とも呼ばれるキャンプ場も登山客で賑わっています。涸沢の紅葉の時期には何度か訪れていますが、この年は、職場の写真仲間と来ました。歩いていると、どこかで見たような人だと思ったら、山のクラブの方で、「わぁ!ここでお会いするとは」とお互いびっくり。そしてしばらくすると、「あら、後藤さん」と声をかけられ、振り返ると同じ山岳写真クラブの仲間です。この時期の涸沢はやはり混むわけです。各山小屋は大混雑で、土曜日の夜は1枚の布団に3~4人になり、夜中、トイレに起きて戻るのが大変です。今回は早めに予約したおかげで、グループで個室が確保され、1枚の布団に2人という贅沢?ができました。そしてこの年の紅葉は、私が今まで見たうちでは一番良かった気がします。

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数