2006年4月号(第52巻4号)

〇日々の天気が猫の目のようにくるくると変わり、寒かったり暑かったりと忙しい毎日である。今年、強風や雨が重なったわりには、東京近辺の桜は比較的長くもったように思う。お花見に絶好の状態で2週くらいは咲いていてくれたが、この頃ではほぼ花は終わり、名残惜しそうに足元に身を寄せる花びら、居残り組みの赤茶色の蕚、新たに登場した新緑の葉や古株の茶色の枝がごちゃごちゃと散らかったようになって、桜の木自身どうしてよいか分からず途方に暮れているようにも見える。皆様の土地ではいかがであろうか。

〇先般、「心に残る、山と花」のシリーズで本誌表紙を飾ってくださっている後藤はるみ先生が所属されている女性の登山グループ、「エーデルワイス・クラブ」の創立50周年記念の写真展が銀座で開催され、お邪魔をした。後藤先生が会場にいらっしゃり、ご親切に被写体となっている山や植物について、また、撮影の背景をご説明くださった。世界各地の険しい山々に登るのも大変なことだというのに、そこでこれほどまでに素晴らしい写真を撮影されるとは、と本当に感心しながら作品群を拝見した。なかでも入り口近辺に何枚も飾られた種々の「エーデルワイス」の写真は、会の方々の愛情が深く込められておりやはり印象に残った。花を気遣い、慎重にシャッターを押す様子がうかがえるようである。エーデルワイスはキク科の多年草である。映画「サウンド・オブ・ミュージック」でも歌われ、誰もがついメロディーを口ずさむほどその名は親しまれている。名前の意味は、ドイツ語のEdel(高貴な)weiss(白)に因むもので、夏には白色の頭花を咲かせる。写真で見た印象では、地のグリーンは控えめにうかがえる程度で、全体が白い軟毛で覆われ雪に烟るよう。この繊細な毛によって、紫外線を防ぎ、高山の厳しい環境から身を守っているのである。しかしその美しさは盗掘のターゲットとなり、また生育環境の変化から絶滅も危惧されている。人害から身を守るには、綿雪のような軟毛はあまりにもはかない。せめて日常のなかで環境を破壊しないように努め、声無き仲間を守っていきたい。

(大森圭子)