2006年1月号(第52巻1号)

〇あけましておめでとうございます。『モダンメディア』も新たな一歩を踏み出しました。これもひとえに今、本誌を手にとられている皆様の変わらぬご支援のおかげと心より感謝申し上げます。

〇本号より本誌の印刷・製作は「富国印刷株式会社」から「株式会社キタ・メディア」へとバトンタッチすることになりました。折しも本誌の創刊当時、森繁久彌主演映画「夫婦善哉」の名科白「頼りにしてまっせ」が流行していたそうですが、当編集室と富国印刷とはまさにそのような関係、創刊以来51年にわたり二人三脚で本誌を作り育ててきました。どのような時代にあっても何より本誌を大切に思い、守り続け、親身になって本誌の仕事に取り組んでいただいたことに対する御礼は言葉では尽くしがたく、これからの本誌の成長をもって感謝を捧げて参りたいと思っております。本年からはあらたな協力者を得て、編集室一同努力してまいりますので、今後ともなにとぞご支援のほどお願い申し上げます。

〇ひょんな機会に杜氏さんとお話することがあった。「杜氏(“とうじ”または“とじ”)」とは、酒造りに従事する蔵人を束ねる酒蔵の長のことである。古代、酒造りは神様に仕える女性が作っており、その女性を束ねていたのが「刀自(とじ;年をとった女性を尊敬する言葉)」であったことから、この発音を継いで「杜氏」となったものと言われる。

日本酒では、燗をすると味の良くなるものを「燗上がり」、逆に悪くなるものを「燗下がり」の酒といい、燗酒が主流の時代には燗下がりするお酒はあまり喜ばれなかったという。かくしてこの杜氏さんのお酒はどうやって飲むのがいいかという話になったところ、その方曰く、結局は好み次第。「何処かで誰かに決まった飲み方を薦められる事があっても、とにかく自分で試してみること。それに、同じ銘柄のお酒でも、どんなに同じように造っても同じ味のものは二度と作れず、これもまた一期一会の世界なんです」とのこと。燗の仕方には、日向燗、人肌燗、ぬる燗、上燗、熱燗、飛び切り燗があり、冷やのほうでは、雪冷え、花冷え、鈴冷えと情緒豊かな日本に相応しく美しい名前がつき温度設定もこまやか。加えて自分の好みやその日の体調を考えてお酒を飲むとなると本当に美味しく飲めているのか不安である。ラ・ロシュフコーに「自分のうちに安らぎを見出せない時は、外にそれを求めても無駄である」という箴言があるが、お酒を美味しく飲むためにも、まず一番に自分のうちに安らぎがあることが大切である。

(大森圭子)