2005年1月号(第51巻1号)

〇新年あけましておめでとうございます。

本誌は本号で通巻590号を数えました。昨年はおかげをもちまして本誌発刊50年を迎えることができましたが,本年は11月号が通巻600号にあたります。

日ごとに世の中の動きが激しさを増すなかで,ひとえに読者の皆様,編集委員の先生方,製作陣の皆様の変わらぬご支援とご協力に支えられ,本誌を発行してまいれますことに心より感謝申し上げます。

編集室一同,本年もより一層努力してまいりますので,今後とも宜しくご支援くださいますようお願い申し上げます。

〇年末年始にかけてお酒を飲む機会がなにかと多い。お酒をたくさん飲める人を「上戸」といい,飲めない人を「下戸」というが,「上戸」にとっては好都合な季節,「下戸」にとっては少々不都合な場面もあるだろう。お酒を飲んで笑いが止まらなくなることを「笑い上戸」というが,この時期は笑いの止まらない「上戸」の人口が増えているかもしれない。

日本のことわざで「酒」に関するものには,「酒は百薬の長」,「酒は憂いの玉箒」など,上戸が思わずにんまりするものも多いが,なかには「酒は飲むとも飲まるるな」,「酒飲み本性違わず(いくらお酒に酔っていてもその人の本性は失われない)」などと,なかでもお酒の席での失態をお酒のせいにしてしまう上戸にとっては耳を塞ぎたいようなことわざも存在する。「酒と朝寝は貧乏の近道」ということわざもあれば「下戸の建てたる蔵もなし」もあり,上戸も下戸もどちらもなかなか負けていない。

江戸初期,安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)が著した『醒睡笑(せいすいしょう)』は,落語の基礎となったわが国で初めての咄本(はなしほん)(笑話集)であるが,そのなかに,お酒を飲みすぎて苦しがっている父を見るに見兼ねた息子が,「そんなに苦しいお酒なら,ほどよく飲めばいいじゃないか」と注意するのだが,父は悔し紛れに目をむき出し,「この酔いが醒めるのが苦しいといって楽しんでいるんだ」と息子に言い返す,といった小咄がある。また,同じく江戸時代の小咄には,願をかけ5年の禁酒を誓った男に友人が気遣って,「それだったら10年の禁酒にして夜だけ飲んだらいいんじゃないか」と提案するのだが,その男「それもいいが20年の禁酒にして昼夜飲むことにしようかな」…といった話もあるそうだ。いつの世もお酒好きの人の言い訳にはどこか愛嬌があって憎めないが,この時期は体を壊さないようご用心,ご用心。

(大森圭子)