2005年1月号(第51巻1号)

スペイン紀行

ペン+水彩(23.0×19.2cm)

昨年秋に,北スペインの巡礼の旅をし,そのおりのスケッチを中心に小さな個展を催した。たまたま,これを目にしたモダンメディアの担当者から「山のスケッチ」に続くシリーズとして採り上げたいと希望された。

そこで今回から「スペイン紀行」と題してスペインの風景のスケッチをお目にかけたい。私はロマネスクやゴシックの古い教会建築が好きなので,どうしてもそれらの絵が中心になるが,バスクの農村や,カンタブリアの明るい海岸など,北スペインの風景も紹介したい。

ヒラルダの塔

ヒラルダの塔はセヴィーリャのカテドラルに付設された高さ98米におよぶ美しい塔で,この街のシンボルとなっている。

中世のスペインはイスラム教とキリスト教の角逐(かくちく)の歴史である。セヴィーリャは8世紀ごろから,イスラム教徒により支配されていたが,13世紀末にはキリスト教徒によって奪還されてしまう。したがって,ヒラルダの塔は12世紀に建られた70米の高さまではイスラム様式であるが,その上の鐘楼部分は16世紀になって,キリスト教徒により付け加えられたものである。

絵ではよく見えないが,塔の先端に巨大なブロンズの女性像があり,風を受けると回転する。ヒラルダとは風見鶏のことである。

街角でスケッチをしていると,よく人が集って来る。この時は修学旅行らしい女子高校生の一団に取り囲まれた。私はスペイン語が駄目だし,彼女らは英語が出来ない。仕方なく,一緒に写真をとって別れた。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ