2004年4月号(第50巻4号)

〇今年1月から始まったNHK の大河ドラマ「新選組!」の影響で,普段はこれといった特徴のない我が町が少しだけ活気づいている。なぜなら,近藤勇の生家・宮川家のあった武州多摩郡上石原村(現在の調布市野水)がそう遠くないところにあり,他にも,勇の娘・瓊子の夫で天然理心流5代目を継いだ近藤勇五郎の道場「撥雲館」や近藤勇の墓がある「龍源寺」など,新選組ゆかりの史跡が周辺に数多く点在しているからである。このあたりではどうやらこれを機会に町おこしをしようということらしい。

しかし,タイムカプセルに入りっぱなしで時代を旅する私は,世間の動きに疎い。ここ数ヶ月,商店街の電燈に結び付けられた「誠」の旗がゆらゆらとはためき,のこぎり柄の看板を鼻先にくくりつけたバスが通り過ぎてもおかまいなしで,猛々しい近藤勇や思いのほか甘いマスクの土方歳三のポスターが貼られた駅周辺を何度往復しても何処吹く風であった。

ところが,汗ばむほどの天候に恵まれたある休日,はたと思い立ちバスで10分ほどの神代植物公園へ足をのばしたところ,新選組の見世物小屋がにわかに建てられているのを見て,ひやかし半分で入ってみたくなった。内心,子供だましであろうと思っていたのだが,なかには池田屋のプチセットや衣装が飾られ,ビデオやパネルなどで親切な解説がされていて大変面白く,企画をされた方々の熱意が感じられた。さらに事情通の方が近くにおられてたっぷりと解説を聞けたこともあって,急激に興味が湧いた。このところ新選組に関する本を読破中であるため,ドラマに見入る家人の横でにわか知識を振りまいて迷惑をかけているが,梅雨になるまでには史跡をめぐり,熱き思いを胸に幕末を駆けぬけた若者達の足跡をゆっくりとたどってみたいと思っている。

(大森圭子)