2004年1月号(第50巻1号)

〇新年,明けましておめでとうございます。今年の三が日はお天気に恵まれたこともあり,すがすがしいお気持ちで新年の一歩を踏み出されたことと思います。今年も皆様にとって幸多き一年になりますよう,心よりお祈り申し上げます。

『モダンメディア』は今年で50年目を迎えました。いつまでも皆様の身近な医学情報誌としてお役に立つ情報をご提供させていただきたいと存じますので,今後ともよろしくご愛読くださいますようお願い申し上げます。また,本年度より弊社のホームページ上にもWeb版の提示を開始いたす予定です。間もなく開設できるよう準備を進めておりますので,ご都合にあわせて本誌ともどもご活用いただければ幸いです。

〇いまではあまりうわさを聞かないが,正月の年中行事のひとつに百人一首を使ったかるた遊びがある。百人一首とは,歌人百人の短歌を各々一首ずつ集めたものの呼称であるのだが,かるた遊びで使われる百人一首は決まって藤原定家撰の短歌集で,他との差別化を図るために「小倉百人一首」とも呼ばれている作品である。

世に生み出されたあまたの“百人一首もの”のなかでこの作品が特出した理由の一つに,藤原定家が歌人として神聖視されていたことがあげられる。江戸時代にはこの「小倉百人一首」が婦女子の手習いの手本とされるほど普及していて,この流れから歌がるたが誕生し,江戸城の御殿女中から武家の婦人や遊女,町女房や子供たちへとかるた遊びの風習が広がっていった。百人一首に影響を受けた川柳,歌舞伎,浄瑠璃,洒落本など様々な文化の発展がみられることからも,かるた遊びを通じて,多くの庶民に百人一首が浸透していた事実が窺えるところである。

正月に遊びにきた姪が,冬休みに百人一首を全部覚えてくるようにとの宿題が出たという。最近物忘れがひどくなった私ならば,年末年始のこの忙しい時期に無茶言わないでくださいよ,とかなんとか理由をつけて即刻お断りしたいところだが,弱冠13歳のうら若き彼女にはなんとかこなせる作業であるらしく,安心した。

(大森圭子)