2004年1月号(第50巻1号)

山のスケッチ

 縁あって私の水彩スケッチを2年間にわたって,モダンメディアの表紙に載せることになった。

 最初は「山のスケッチ」というシリーズである。私は今では「元山屋」に落ちぶれているが,山が好きである。また絵を描くことも好きである。したがって山に向って絵筆をとっている時は,私にとって至福のひとときである。日本やネパールの山々でのそんな至福のひとときの一部を紹介できるのをうれしく思っている。

アンナプルナ南峰

 アンナプルナはネパールの中央部に位置し,I―IV峰,南峰などから成る東西80kmにおよぶ大山群である。アンナプルナとはサンスクリット語で「豊穰の女神」の意味で,I峰(8,091米)は1950年,フランス隊によって初登頂された。それは人類にとって初めての8,000米峰の登頂であり,戦後の華々しいヒマラヤ登山の幕開けとなった。この山域には7,000米を超える山が11座もあって,それぞれが優に独立峰の風格を備えている。

 なかでも南峰(7,219米)は標高こそ低いが,堂々とした山容をもち,象の頭に似た形からヒンズー教の象頭の女神の名をとって,ガネシュとも呼ばれる。

 ポカラからも良く見えるが,やはりもっと近づいたタダパニあたりからの眺めが私は好きである。特に前山が紅に染まる朝が良い。もっと高い所から眺めると,まわりの高峰に見劣りするようになる。 アンナプルナ山域をめぐるトレッキングは,アプローチが短く,高山病の心配も少なくて,すぐれたヒマラヤ入門コースであるが,最近ネパールの治安が良くないのは残念である。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ