2023年10月号(第69巻10号)

 みなさん、こんにちは。
 10月に入り、昨日は北海道で雪が降りました。それに対し、関東では夏日が続き、上野恩賜公園では桜が開花したそうです。日本列島の中で四季を感じた一日でした。
 先月、長年開催されていた楽葉会(モダンメディアの編集委員の情報交換会として始まり、後に黒住医学研究振興財団の前身である小島・福見記念会およびCC(Clinical Chemistry)委員会の役員の先生方も参加され、定期的に開催していた会)が幕を閉じました。この度、諸事情により閉会となりましたが、3代目として編集委員を務められた山口英世先生(帝京大学 名誉教授)よりご挨拶をいただき、当初の会の様子や、普段は交流できない違う分野の先生方との交流はとても貴重で楽しかったとお話をいただきました。ご多用のところご参加いただいた先生方には大変有難うございました。
 さて、今月は藤井聡太棋士が史上初の八冠となり、八大タイトルを制覇したのが大きなニュースとなりました。永瀬拓矢棋士との王座戦第4局を制してのタイトル獲得で、序盤から永瀬棋士が有利に対戦を進めていましたが、藤井棋士の終盤に追い上げる逆転劇で見事勝利を収めました。将棋は全くの素人なのですが、永瀬棋士が123 手目を指す前のAI の予想では9割、永瀬棋士の勝利の予想からの逆転となり驚きです。普段からAIを使って対局をしているという藤井棋士は、自分の知らない局面から将棋AIと実際に指し、中盤の大局観や終盤の読みの力を鍛えているということで、最善を指し続けられる強さがあるのではないかと言われています。一方、持ち時間を使い切り、1分将棋の状況で123手目を指した瞬間自分の過ちに気づいた永瀬棋士も見事であり、自分の指した一手がどんなに悔しかったことでしょう。激しく対局をした2 人は、実は日頃から研究会と称し、対戦を行うほど仲が良いそうです。王座戦の前日も数時間かけて対戦していたエピソードを聞き、飽きることなく続けられる才能をうらやましく思いました。
 また、10月と言えばノーベル賞ウィークです。日本人の受賞がなかったため、ノーベル賞自体があまり注目されていなかった印象ですが、今年はなんといっても生理学・医学賞を受賞したカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏に賛辞を贈りたいです。本発見により、mRNAワクチンを11か月で実用化させ、何百万人の命を救いました。インタビュー記事によると、カリコ氏は決して順風満帆な研究人生を送ったわけではなく、大学の上司からも研究意義を問われ、悔しい思いをたくさんしたと話をしていました。そんな中でも、研究を諦めず、異分野のワクチン研究をしているワイスマン氏と共に研究することで今回の発見につながりました。自身も大学研究室で結果の出ない研究に悩んだ一人として共感しつつ、カリコ氏が研究を諦めなかったことにあらためて賞賛をおくりたいと思います。

(美濃部 さやか)