2023年2月号(第69巻2号)

 みなさん、こんにちは。2 月に入り、三寒四温と言いますが、雪が降ったかと思うと4 月並みの暖かい気温になるなど気候の変動が激しく、過ごしにくい日が続いています。そろそろ花粉も飛散し始めました、というニュースを聞くと、毎年のことながらではありますが、花粉症のため気分が落ち込みます。
 さて、先日新聞に映画のレビューの記事を読み、高評価で興味を持ったので、久しぶりに映画を観に行きました。私の場合、ジャンルは選ばないのですが、映画館で観るのはもっぱらアクションなどの娯楽映画を見るのが好きです。映画「 SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」 は、ハリウッドの絶対権力者の大罪〈 性的暴行事件〉 を暴いた衝撃の実話を、ニューヨーク・タイムズ紙の記者が記事を出すまでを描いた作品です。この記事は、その後世界中の#MeToo に火をつけたひとつのきっかけになりました。
 映画は原作 「その名を暴け−#MeToo に火をつけたジャーナリストたちの闘い−」 が基になっており、主人公であるニューヨーク・タイムズ紙の女性記者、ジョディとミーガンが書いています。レビューでも書かれていたように彼女たちの丁寧な取材は賞賛に値し、一生分の仕事をしたと思います。映画は、戦争や殺人などは一切起こりませんが、とても緊張感があり、被害者の回顧に基づく証言テープは映像よりも生々しく、恐怖を感じました。
 「問題はワインスタイン( 加害者) 以上に性加害者を守る法のシステムにある」という点に触れたこともこれまでになかった視点でした。多くの女性たちがこれまで証言しても、もみ消されたり、お金を支払われることで示談に応じたりして封印されてきただけなのです。その中でも権力に屈せず戦った女性もいました。その女性が記者に対して、何十年も事件が記事になることを待ち望み、しかも30 年前の事件でなく、現在進行形でいまだに続いていることだと語った箇所が印象的でした。取材を受けてくれた彼女たちがひとり、またひとりと実名を公表しても構わないと記者に連絡する場面は思わず涙しました。隣には出張中と思われる若い男性が座っていましたが、同じように涙していました。
 私は映画のような新聞記者ではなく、扱う内容も規模もまったく違いますが、編集後記という形で発する機会があるので、今回何かを文字にすることについて考える機会になりました。日本でも#Me Tooが起こるようになりましたが、日本特有の 「選択的夫婦別姓」 問題など多くの課題が残されています。こちらは30 年以上動いていないようですが、時代の流れとともに変えられるものは変え、女性だけでなく、男性にも快適な世の中になればと思います。

(美濃部 さやか)