2020年5月号(第66巻5号)

〇医療現場で働く皆様をはじめ、新型コロナウイルスと最前線で戦い、人々に勇気と希望を与えてくださり、日々の生活を支えてくださっている皆様に心より感謝申し上げます。
〇昨年11 月に、中国・武漢での「原因不明のウイルス性肺炎」のニュースを聞き、1 月にはわが国での感染者を確認、2 月にはダイヤモンド・プリンセス号の集団発生が起こり、新しい感染症の恐ろしさを知った。
 新型コロナウイルス感染症のまん延の恐れが高いとして、政府対策本部が設置されたのが3 月26 日のこと。4 月7 日には、7 都道府県に向けて新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を発出、4 月16日には区域が全都道府県に広げられ、5 月4 日には緊急事態措置の期間が延長されることになった。その後、5 月14 日、21 日と措置の実施区域が変更になり、5 月25 日、ようやく全区域にわたり緊急事態が終了したことが宣言された。
 長きにわたり危機感を募らせる毎日を過ごしてきたところ、朗報ではあるが、今後も「三密を避けること」や「人と人との距離の確保」「マスクの着用」「手洗いなどの手指衛生」を継続すること、さらに感染拡大予防のための「新しい生活様式」の定着が必要とされている。これまでとは違うどのような新しい生活様式が定着していくのか、7 月31 日までの移行期間に、新しい暮らしを受け入れる柔軟な心構えが必要である。
〇緊急事態宣言では、社会的距離を確保することから、会いたい人と会えなくなったことが大きな心の痛手となった。
 「あう」という漢字には、「 会う」「逢う」「合う」「遭う」「遇う」があり、それぞれ「逢う(恋人など思い入れのある人とあう)」「合う(二つ以上のものが一つになる、一致する)」「遭う(嫌な事柄や人に偶然あう)」「遇う(好ましい出来事にあう)」などの意味がある。「会う」には、人と人とが顔を向かい合わせる、場所を決めて対面するなどの意味があり、旧字では「会」は「會」と書き、土器に蓋をして色々な物を集めて煮炊きをしている様子を表している象形文字とも、「人」という文字と「増す」の元字が合わさった会意文字ともいわれており、人々が集まるという意味を持っている。
 また「社」という漢字は、お供えを捧げるための台と土を盛った場所を示す象形文字であり、神様を祀る場所や神様を中心として集まる集合体を表す意味を持っている。
〇明治初期に「society」の原語が伝わると「仲間」や「交際」「会社」などとも訳されたが、幕末から明治にかけての武士・ジャーナリストであった福地源一郎によって「社会」の訳語があてられ、これが定訳となったと言われている。この頃は言葉の意味が統一されておらず、日本人同士でも話が通じないこともあったらしく、 「社会」とこれを引っ繰り返した「会社」は同じ意味で使われていたそうである。
〇同じ目的をもって人々が集まるところが社会であり会社であり、共同生活を営む場である。感染症を収束させようという同じ目的をもつ社会を築けたことで緊急事態を終わらせることができた。この成果が自信と誇りにつながり、これからも柔軟に新しい社会が築かれ、人々の暮らしを守っていくことと思う。

(大森圭子)