2019年6月号(第65巻6号)

桜を見る会と園遊会

日本医学教育評価機構 常勤理事
奈良 信雄

2014年春、内閣府から立派な封書が届いた。慌てて開けてみると、毎年4月の第2土曜日に開催される「桜を見る会」への招待だった。断る理由もなく、夫婦で会場の新宿御苑に出かけた。
この年の春は雨がちだったが、日頃の心がけが良いのか、当日は雲一つない晴天。広さ58.3ヘクタールの園内には、八重桜が満開で、緑の芝に映えていた。少し余裕を見て出かけたのだが、開園時間には入場門はすでに長蛇の列。聞けば政財界、文化界、芸能界、スポーツ界、海外招待者など、各界の著名人が1万人以上も招待されているとか。筆者は一体何の著名人か知らねど、野暮なことは聞かなかった。
園内にはあちらこちらにテントが張られ、寿司、焼き鳥、団子などの食べ物に、アルコールもふんだんに用意されていた。予定時刻になると総理大臣を先頭に全閣僚が現れた。消費税増税の論議が喧しい中、安倍首相は満面の笑みだった。
それから3年。2017年春には、菊の御紋が入った招待状が届いた。今度は4月20日の園遊会への招待だった。会場は一般人では立ち入りのできない赤坂御苑。しかも「桜を見る会」では平服を指定されていたが、園遊会は礼服。後輩の結婚式の際にしつらえたモーニングをタンスの奥から引っ張り出した。妻はこの日のためとばかり、着物を仕立てた(もっとも妻は体調不良で参列できなかったが)。
会場に着くと、厳重な警備が。庶民対象の「桜を見る会」とは違い、宮内庁職員の手厚いもてなし。合間には雅楽の優雅な響き。広い園内は、都心とは思えない静寂感。天皇家で出される料理はジンギスカン。これはウシ、ブタを食べない外国人を配慮してのことだとか。
招待客も2,000ほどではあるが、報道関係者がぎっしり。それもそのはず、宴たけなわになると、天皇御一家が招待客をねぎらいに。同時にカメラのシャッターがバシバシ。
総理大臣と天皇主催のガーデン・パーティに参列し、好天に恵まれて、日本の春を満喫することができた。