2019年2月号(第65巻2号)

20年後

元 東京医科歯科大学 分析検査学
亀井 幸子

今年私は年女(はて何巡りめ?)。
永年の文部教官生活に停年で惜別するとき、これまでの人生を顧みた。おこがましい表現で恐縮だが、仕事と家庭生活を、汗と涙を隠しながら曲がりなりに両立させた。「次の十年はフルタイムを遠慮申し上げて非常勤で社会に多少のお返しを続けたい。その先は自由な暮らしを、」と思った。
ありがたいことに、夫、私、子供2人、孫5人、孫妻1人に恵まれ、私たち老夫婦は年齢相応の健康状態を保ちつつ二人で暮らしている。
車は今でも大好きである。スポーツ車が不遇の時代を迎え、CO2排出の削減と省エネルギーを目指す車種が世に迎えられるようになったころ、ちょうど単身赴任を終えた夫が帰任の挨拶?にプリウスをくれた。スポ車と違ってガソリンがちっとも減らなくて、粗忽者(私よ)はメーターの故障と思い込み、ガソリンスタンドで相談して嗤われた。こんなにもCO2排出が少ないことが実証されて、車を使う後ろめたさが小さくなり、楽しく使いまわした。
......やがて、加齢とともに生活習慣改善にウエイトが傾いて、よく歩くようになった。プリウスは、バッテリー上がりという手段で私に再々反撃するようになった。今年の誕生日、未練を断ち切って運転免許証を写真付き身分証明書に換えることとし、プリウスは車検の日に身売りさせた。
ご興味ないでしょうけど最近の暮らしぶり。
旅行 旅行好きの夫は方向音痴の妻にとってツアコン兼用心棒兼財布というありがたい存在だったが、最近私の足腰に多少問題が生じ、クルーズや滞在型が好みとなりつつあるのは悲しい。よかった旅先を3つだけ挙げれば、イースター島、アイスランド、トルコかな。散歩 都内や近郊、単なる買い物合わせて、毎日1万歩でも疲れなかったのが、最近3日で1万歩になっていて愕然。散歩友達でもあった和子さんの急死は癒えることのない大打撃。園芸 手間いらずで丈夫で季節が来ればいつの間にか咲いてくれる鉢植えを3種。君子ラン(30鉢)、シンビジウム(30鉢)、それとシクラメン(5鉢)。去年、種を採って蒔いたのが今咲いている。これは初めてで、嬉しい。読書サイエンス、ネイチャーにかえて、せめて日経サイエンス、ニュートンと頑張っていたが、最近途切れがち。目下塩野七生さんの「ローマ人の物語」に惚れ込んで、2回目の第25巻め。学術資料をしっかり踏まえた歴史物語に惹きつけられっ放し。書道 座り込んで根を詰めていると、どうしてか血圧が高くなり、目下お休み中。
御退屈様でした。お付き合いくださいました方に感謝です。