2018年11月号(第64巻11号)

進化し続けるコンピュータプログラミング

川崎医療福祉大学 名誉教授
松田 信義

超大型のスーパーコンピュータ群のGoogle検索マシンも小さい携帯マシンも、原理は同じで2値(0と1)を基本にしたデジタルコンピュータです。言い換えますと、コンピュータはプログラムで機械を自動的に動かすツールです。たえず進化し続けていますが、特に、デジタル装置と画像処理装置の癒合(2006年頃)を契機に、データ処理力が飛躍的に高まり、オープンソースのプログラム言語の開発が飛躍的に進展し、急速にグローバル化されました。特にスクリプト系のR言語のコマンド群は何千種類もプログラムパッケージとして公開され、必要なパッケージは無償でダウンロードして、目的のプログラムを容易につくることができるようになりました。その応用面に目を向けますと、ロボット、自動運転、自動翻訳、仮想通貨、ゲーム、将棋など枚挙にいとまがありません。AI(人工知能)、機械学習、統計的学習とかを耳にしますが、どれも「プログラムして自動化する」ことに依拠しています。
臨床検査では市原清志教授による共用基準範囲設定の快挙があります。教授は2008年より10年間、基準範囲設定の研究で基盤研究助成金を2回獲得され、IFCCの委員長を10年歴任されました。その間に日本をはじめ22か国の臨床検査の基準範囲設定を成し遂げられ、設定法をC#で書いたプログラムで公開されています。更に、20年間の大規模健診時系列健診データの分析に、スクリプト系の言語(Stata)で記述した基準範囲設定法を応用した共同研究を進めています。その結果、個体間変動の基準範囲と併せ早期診断に有用な個体内変動の新な尺度を設定されました。
癌の画像診断では、「肺癌CT画像自動診断法が専門読影者と同じレベルに達した」との報告がみられる一方で、NEJMの最新号に「ヘルスケア(医療)に機械学習法の導入-倫理的挑戦への取り組み」と題して、患者、医師、及び提供者がどう変わるかが論じられ、倫理の標準を早急につくることが急務であるとむすんでいました。
21世紀は誰もがインターネット、ロボット、自動機械、コンピュータと共生し人生100年の先例のない道のりを歩むことになるでしょう。