2018年11月号(第64巻11号)

日本の四季彩巡り(11)

もみじ庭園の幻想美

撮影地:
京都
瑠璃光院

京都の11月は、北から南まで約1ヶ月間紅葉を楽しむことができる。この15年間、毎年春の桜と秋の紅葉の季節にはいつも決まった個人タクシーの運転手さんにお世話になっている。彼は裏道に精通していて、日曜日の混雑時でも渋滞を避けて車を走らせ、そのおかげで時間の無駄がなく撮影することができる。今回も早朝から行動を開始した。京都の八瀬にある瑠璃光院は浄土真宗のお寺で、書院の1階には美しい苔の庭園と紅葉の木々があり、書院の2階にある机の天板には庭の紅葉が映り込み、その光景がinstagramで紹介されてから以前にも増して多くの観光客が訪れるようになった。紅葉の色づきは左方のカエデから始まり、黄色から朱色、紅色へと変わり、その移り変わりが右方のカエデに伝わっていく。一番狙いたいシーンは紅葉の色が数種におよび、グラデーション化している状態である。これらの紅葉が完璧にみがかれた漆黒の机の天板に映り込む光景は、現実とは思えない幻想的で心があらわれる世界である。この日の朝の開場は9時、朝晩は冷え込む時期で、人がまだ来ない早い時刻に撮影ができた。京都の寺院はほとんど三脚の使用が禁止されている。光が十分届かない条件でぶれない写真を撮るために、カメラを天板の上に載せて撮影する。美しさ故に長居するカメラマンが多いが、お寺の関係者が訪問客を平等に撮影できるように交通整理してくれるのはありがたい。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。