2018年4月号(第64巻4号)

大切な3つの心

医療法人社団松和会 常務理事・順天堂大学名誉教授
富野 康日己

これまでに得た大切な3つの心を紹介しましょう。
1.今、勤務している施設を愛せよ!
どのような施設でも完全に満足できるということはありません。そのようになるよう職員全員で努力することが必要なのです。私は、大学病院をはじめ4つの大きな病院・透析施設とその外勤先で医療をしてきましたが、どの施設も大好きです。それぞれの施設には、それぞれの特長がありますが、問題も抱えています。「前の勤務先では、〇〇〇だった(こんなに良かった)。それに比べここでは×××だ(こんなにダメだ)」というような「出羽守(ではのかみ)」にはならないよう気をつけてきました。今の施設と来て下さる患者さん・家族を愛し、慈しみの心(順天堂の学是:仁)で接することが大切なのです。
2.いつも科学(サイエンス)のセンスをもち、臨床診療に活かせ!
基礎・臨床医学の最新の知識・技術に目を向け、患者さんの診療に活かす姿勢が大切です。仕事に慣れてくると、それに満足して学ぶことを忘れがちです。医療スタッフは、常に学ぶ姿勢を忘れてはなりません。私は、多くの医師や基礎研究者、臨床検査技師と共同研究し成果を発信するとともに、診療に役立ててきました。私の座右の銘は、「研精不倦(けんせいうまず)」(研鑽することに飽きることはない)です。
3.経営感覚をもて!
これまで、医師がお金のことを話すのは卑しいことで、お金は考えずに医療のことだけをしていればいいと教えられました。しかし、「財の独立なくして、学の独立なし!」と言われています。勤務施設の経営・運営が良好でなければ、最新の医療機器を購入したり入れ替えたりすることが出来ず、ゆとりをもたなければ心のこもった診療はできません。もちろん給与にも響いてきます。すべての医療スタッフは、無駄をなくし費用対効果を考えた医療経済に目を向けるべきなのです。