2017年8月号(第63巻8号)

ジェネリック医薬品普及の裏側で

岩手医科大学医学部臨床検査医学講座教授
諏訪部 章

最近、ジェネリック医薬品を販売している企業のテレビコマーシャルがよく目に留まる。
2014年の診療報酬改定で、医薬品全体に占める後発医薬品の割合である後発医薬品指数(係数)が導入され、改定の度にその係数は評価上限が引き上げられ、最近では70%に達している。この係数をクリアすると診療報酬が加算されるため、DPC対象病院でのジェネリック医薬品の導入は年々加速している。国や患者にとっては医療費の節減、病院にとっては購入費用の抑制と収益の向上と良いこと尽くしの感がある。一方、ジェネリック医薬品の一部には、薬効はオリジナル医薬品と同等としても、薬物そのものの純度の違いや製造過程での不純物の混入の可能性など、さまざまな問題点が指摘されているという情報もある。
当然のことながら、これまでオリジナル医薬品を販売していた製薬企業にとっての打撃は想像に難くない。その煽りを受け、これまで製薬企業が主催していたさまざまな講演会や研究会などが激減していることはまだあまり問題になっていない。特に、比較的高価であった抗菌薬を販売してきたメーカーほどこの傾向は顕著である。製薬企業の利益は、産学連携を通じて次世代の新しい医薬品の研究開発に投資することばかりではなく、講演会や研究会などのさまざまな機会を通して医師や薬剤師などに重要な医薬品情報を提供し、国民の安全を守り、医療の発展に寄与することにも還元されるべきと考える。
しかし、このままジェネリック医薬品が普及し、オリジナル医薬品を研究開発してきた製薬企業が衰退すると、産学連携体制も衰退し、新しい医薬品の開発も衰退し、ひいては医療の進歩そのものが衰退するのではないかと懸念する。また、製薬企業からの薬剤に関する情報提供の機会が失われることは、適切な薬剤の使用の妨げにもなり、医療安全の面でも不安を感じてしまう。
ジェネリック医薬品を販売する企業も稼いだ利益をどのように社会に還元してゆくかを真剣に考えてほしいと願ってやまない。