2015年3月号(第61巻3号)

「ウイスキー・ラベル物語」のその後

自治医科大学 名誉教授
河合 忠

NHKの朝ドラ「マッサン」が放映されていることもあり、ジャパニーズ・ウイスキーがこの処、マスコミや友人の間でもしばしば話題となっている。小生のつたない随筆シリーズ「ウイスキー・ラベル物語」が本誌に掲載されたのは2002年から5年間にわたり、合計24編となった。間もなく、大阪の「現代創造社」からの依頼があり、それらの原稿をほぼそのままの内容で編集しなおして、「琥珀色の奇跡ウイスキーラベルの文化史」という素晴らしいタイトルの単行本として2007年3月に出版された。もちろん、素晴らしいタイトルと“琥珀色”に近い美しい表紙デザインは出版社の編集スタッフに依るのだが、加えてその出版を快く許可して頂いた栄研化学株式会社並びに本誌の編集嬢の手助けがあってのことであった。医学書以外の単行本としては初めての経験であり、何回も手に取って眺めたことであった。残念ながら出版社の都合で絶版となり、今ではインターネットなどで中古品を探す以外に入手方法はなくなった。日本のウイスキー消費量は、焼酎ブームに圧されて、1982年をピークに激減してきたが、この処2009年頃から国内消費量がやや上向きになっていたが、2014年に大きな転機を迎えている。ニッカウヰスキーはアサヒビールの傘下に入っても創業者竹鶴政孝氏の伝統を守り続け、「マッサン」の放映で人気が上昇中である。サントリーウイスキーは海外進出へ大きく舵を切った。『白州』の里に4基の蒸留窯を増設し、世界140か国に販売網を持つ米国のビーム社を買収し、2020年までには1兆円の売り上げを目指すという。さらに、拙著では第5章の最後のページに10行ほど紹介したイチローズ・モルトが、創業10年の今日秩父のウイスキーとして人気を博し、ニッカ、サントリーとともに国際品評会で最優秀賞を獲得し、文字通りジャパニーズ・ウイスキーは世界に大きく羽ばたきつつある。