2015年1月号(第61巻1号)

教育の仕事に携わらせていただいて

独立行政法人 大学評価・学位授与機構 教授
中原 一彦

私は現在、(独)大学評価・学位授与機構に勤務しているが、今年で10年目となる。こんなに永く勤めることになろうとは最初思っていなかったが、月日の経つのは早いものである。大学評価・学位授与機構という名前はあまり聞いたことがないと言われる方もあると思うが、主な仕事は文字通り、「大学の評価」と「学位の授与」である。平成3年、国立の機関として学位授与機構が創設され、その後、平成12年に大学評価が加わって現在の名称となり、平成16年、国立大学が法人化されたと同時に当機構も独立行政法人となった。大学評価と学位授与のうち、私が所属しているのは学位授与の部署である。
私は小さい頃から、大きくなったらお医者さんか、学校の先生になろうと思っていた。何か漠然と人の役に立ちたいと思っていたのかも知れないが、母方の祖父の影響が大きいのではないかと思っている。そして希望通り、医師となることが出来たが、考えてみると機構に来る前の、大学での仕事は、診療・教育・研究の3本柱で、その意味では医師としての診療と、学生への教育といった観点で、はからずも子供のころの希望が叶ったこととなった。現在の仕事は、この中でも教育に比較的特化した仕事となり、また、教育と言っても直接学生に講義をするわけではなく、試験や単位を認定するなどして学位を授与する仕事が主であり、いわゆる教育とは少し趣を異にするが、自分としては現在の仕事に満足している。毎年、多くの人が当機構に学位の申請をしてくるが、学位取得の理由は様々である。専門学校や短期大学を卒業して実社会に出たが、やはり大学卒の学位が欲しい、あるいはもう一度勉強をし直したいなど様々である。年に2度、学位授与のための試験を全国的に行うが、毎年3,000名ほどの人が受験し、皆一様に真剣である。緊張して受験する受験生の顔をみると、全員が合格してくれることを願わないではいられない。努力が実ってみごと合格して学位を取得し、感謝の言葉などをもらうと、この仕事をしていて良かったなと思う。当機構での学位は大学の学位と全く同等であることが法律上も規定されているが、まだ認知度が低く、もう少し世の中の人々に知ってもらいたいと思うこと切である。我々にはそのための広報活動が求められている。機構で働いて良かったと思うことは、大学時代では味わえなかった、他の専門分野の先生方と日常接することが出来ること、また教育を医学のみならず、少し大局的な観点からみることが出来るようになったのではないかと思うことであり、これは私自身の勉強となっている。いずれにせよ、教育はあらゆる事柄の中で最も根幹となるものであり、そうした事業に少しでも関わっていることが出来ることは私にとって幸せであり、感謝している。