2014年11月号(第60巻11号)

50歳の新幹線に感謝

関西医科大学 臨床検査医学講座主任教授
髙橋 伯夫

以前に、本コラムでパソコンと人とを比べる話を書きました。メンタルストレス過剰では、仕事が先に進まなくなりうつ病に突入しますが、長期休暇を与えてから復帰させると復調することが多いですが、これがパソコンと同じで、スタックすると強制終了させてリセットすることで回復することを述べました。私事ですが、断り難い講演依頼で新しいテーマを受けると題材作りに苦労します。アイデアがないので、頭の中が真っ白ですから、考えがまとまらず時間が無駄に過ぎるだけです。そんな時には、敢えて気分を変えるためにジョッギングに出たり、テニスやゴルフを楽しんだりして、再び取りかかると、体は疲れているのに意外と考想がスムーズにまとまり、成果がでます。皆さんも経験がおありのことでしょう、実は、今も通勤の京阪電車の中でパソコンを広げてディスプレイに向かっているところです。今日がこのコラム原稿の締め切り日だと、先ほど気づいたものです。私のお気に入りは新幹線で、京都から東京までは2時間余りですので、丁度良い、集中できる時間です。仕事が溜まると新幹線での出張が待ち遠しいほどで、その往復で片付けることができます。平素は、アルコールが入ると仕事をする気にならないのに、不思議と帰りの新幹線内でカートを引いたお嬢さんに好物の宝缶酎ハイを所望し、チビチビやりながらパソコンに向かう時が一番効率よく仕事ができます。これは、ある程度の雑音があって、それが雑念を払ってくれているのか、移動中という、ある意味で開放感があるせいかもしれませんね。アイデアが湧かないのは脳が雑念で占められているからに違いありませんが、この環境は雑念を一過性に隠してくれるのでしょうね。
私事ですが、来年3月には、67歳の定年を迎えることになりました。楽しみの新幹線出張も少なくなりつつありますが、一層少なくなると思うと寂しいだけでなく仕事が捗らないのが困ります。でも、大した仕事もないでしょうから大丈夫かな。